Neurological Surgery 脳神経外科 14巻12号 (1986年11月)

発想の転換 田中 隆一
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 日本海側の大雪はここ数年慢性的になったようで,過ぐる冬もまた例年より雪が多く,寒さも一段と厳しいものでした.雪に閉じ込められた北国の若者や子供達の楽しみは,何といってもスキーです.われわれの教室でもスキーは盛んで,看護婦さん達といっしょのスキー旅行は教室の年中行事の一つになっています.雪国に生れ育った私ですが,これまでなぜかスキーとは全く縁がありませんでした.ところが,教室の若い人達に尻を叩かれながらリフトに乗ってみて,雪山の美しさにすっかり魅了されてしまいました.雪のない季節に登ってみればどこといって特徴のない平凡な山々も,雪化粧によって秀麗を誇る嶺々に変貌してしまいますし,雑木の枝に咲く霧氷は青空に映えて美しく幻想的でさえあります.この自然の美しさを堪能したい一心で,私もスキーを始めました.

 実践の前にまずは理論をということで,スキー入門書なるものに目を通しているうちに,スキー技術に関する興味ある記載が目に留りました.スキーを習い始めた人がとりあえず目標とするのは,スキーを平行に揃えたままでターンを行うパラレル技術ですが,パラレルに至るまでの基礎的な技術としては,スキーをV字状に開くシュテム技術が採用されています.

解剖を中心とした脳神経手術手技

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はじめに

 再発した脊髄髄内腫瘍を2回以上にわたって手術する場合,初回手術と違う点はどこか,どのような手術手技が必要で,どうすれば全摘出に成功するか?などの記載は少ない.それは,各症例ごとに条件が違い一律にこうすればよいと言い切れないなど,問題が沢山あるからであろう.しかし手術が難かしくなることだけは確実なようで,Fischerらによると1)

 Surgical difficulties increased at reoperation follow—ing incomplete removal:All the tissues are adherent,the plane of cleavage disappear, and the removal ofthe tumor is often damages the neural tissue.In ourseries(16 cases)only one patient was reoperatedon,……

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I.緒言

 1976年,脳卒中外科研究会の要請により,岩手医大,金谷春之教授1)を中心に全国6施設より410例の大脳基底核部出血の手術例を集め,高血圧性脳出血(主として被殻出血)のneurological gradingとCT classificationが作製されたことは諸賢のよく御存知のことである.その後,約10年間,被殻出血の手術適応をはじめ,諸問題がこのgradingおよびclassificationを土俵にして論じられることが多い.しかし,その後,症例数の増加による経験の積み重ね,CTおよびその読影の進歩により,このgradingおよびclassificationが必ずしも万全でないことに気がつかれた方は多いと思う3,6)

 著者も,上記委員会のメンバーの一人として,このgrading,classification作製に参加させて頂いた者であるが,その後,主として血腫の進展様式を検討するにつれ,次第にその万全でない点が浮かび上がってきた.

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I.はじめに

 著者らは脳血管攣縮の本態を解明する目的で脳血管平滑筋の収縮・弛緩の機序をCa2+の動態を中心に研究を行い12,13,29,35),脳血管における平滑筋細胞内のCa2+を制御することが脳血管攣縮の治療につながる可能性があること,Ca2+拮抗剤が実験的脳血管攣縮の寛解に有効であること30-32),ヒトの症候性脳血管攣縮症例のなかで,Hunt-Hessによるgrade II,IIIの予後が改善すること33)を報告してきた.

 本論文ではCa2+拮抗剤,Diltiazemを破裂脳動脈瘤患者に投与し,Diltiazemの症候性脳血管攣縮に対する効果について,くも膜下出血のCT分類との関連性において検討したpilot studyの結果を,若干の文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 各種頭蓋内疾患の病態を解明する指標として脳血流最(CBFと略す)測定は極めて重要である.全脳血流量の定量的測定は,1945年Schmidt, KetyらによってN2O法を用いてはじめて行われた20).その後,Lassen,Ingvarらは85Kryptonを用いて局所脳血流量の定量的測定を可能にした15).最近はこれらに加えてpositron emission tomographyを用い,断層局所脳血流量をとらえる方法が確立されつつあり19),脳血流量の測定は非常に詳細に検索できるようになりてきた.この結果,診断に関して脳血流量のみならず,同時に代謝との相関が求められようとしている3,21-23),一方,CBFは刻々変化するものであり,重症患者の管理にCBFのモニターは非常に有用な情報をもたらす.しかし,これまでのCBF測定法では病棟で簡単にできない難点があり,ドップラー法による頸動脈血流測定法がその代用として利用されている.

 著者らは,ベッドサイドで容易に全脳血流量の指標を得る方法として,脳血液容積変化に伴い頭蓋骨が動く現象に注目し,それをskull impedance plethysmogramとしてとらえ,venous outlet occlusionに伴う脳血液量増加率から判定できるのではと考え実験研究を行ったので報告したい.

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I.はじめに

 Serbinenko12)が1974年に治療目的にバルーン・カテーテルを導入して以来,さまざまなカテーテルが使われるようになり,この分野での進歩には目覚ましいものがある2,3,6,11).なかでもリーク・バルーンの導入は画期的なことであった6).液体塞栓物質による塞栓術(liquid embolization)は最も将来性の高いものと考えられるが,解決すべき問題も多い.塞栓物質としては,isobutyl−2—cyanoacrylate(IBCA)のような物理的塞栓物質4)よりも,われわれが報告してきたような化学的塞栓物質(chemical embolizing material)9,13)のほうが,より根治性が高いと考えられる.われわれは結合型エストロゲンをはじめとして新しい液体塞栓物質を開発中であり,このような薬剤は注入遠位部に,difiuseな閉塞をもたらすと考えられる.そこで,より安全に超選択的catheterizationが可能な新しいバルーン・カテーテルの開発が必要となった.本報では3つの部分よりなる新しいシリコン・バルーンカテーテルを紹介するとともに,その操作法,臨床応用についても報告する.

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I.はじめに

 いわゆるidiopathic brain stoneは非常に稀で現在までに5例の報告があるにすぎない.このうちテント上の3例ではてんかんを合併しており,epileptogenicfocusと成り得る.

 今回われわれは精神運動発作を呈した症例において,spike focusがほぼbrain stone周囲に一致し,brainstoneを含めtemporal lobectomyしたところ発作の消失が得られた稀な1例を経験したので文献的考察を加え報告する.

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I.はじめに

 頭蓋内神経鞘腫は全脳腫瘍のうちの7.5%を占め,そのほとんどは聴神経および三叉神経より発生し13,20,24),他の神経より発生することは稀である.特に頭蓋内舌下神経鞘腫は極めて稀であり,今日までわれわれが検索し得た限りでは29例が報告されているにすぎない1-10,12,14,16-19,21,23-29).そのほとんど,すなわちBerger4)の報告例以外の28例に舌下神経麻痺がみられた.今回われわれは全く舌下神経麻痺をきたさず,術前のCTがその診断に非常に有用であった症例を経験したので,考察を加え報告する.

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I.はじめに

 臨床上経験する頭蓋内髄膜腫のほとんどは硬膜もしくは脳室脳絡叢に付着して存在するが,このような付着をもたない稀少例も知られている.Cu—shingとEisenhardtはシルビウス裂内に発育したこの種の髄膜腫2例を報告し,"deep sylvian psammomenin—gioma"とよび,その後もいくつかの名称のもとにこうした髄膜腫の報告がなされてはいるものの,その総数はいまだ20余例にすぎず,充分な補助診断と治療が行われている報告は近年の数例に限られる.最近われわれはシルビウス裂内に発生した髄膜腫の1根治例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

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I.はじめに

 最近われわれは中頭蓋窩くも膜嚢腫に合併した三叉神経痛に対し,cystoperitoneal shuntを施行して三叉神経痛を治癒せしめ得た症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 CTの普及に伴い頭蓋内海綿状血管腫は比較的よく見られる疾患となってきたが,硬膜より発生し,extra—axialに発育することは稀で,なかでも頭蓋穹窿部に発生した報告は過去1症例5)を見るのみである.さらに海綿状血管腫が他の異なった組織像を呈する腫瘍に合併した報告は文献上数例を見るにすぎない.われわれは左傍トルコ鞍部からトルコ鞍内に発生した移行型髄膜腫に,硬膜より発生した左穹窿部の頭蓋内脳外海綿状血管腫を合併し,CT上多発性髄膜腫に類似した像を呈した興味ある症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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I.はじめに

 Kleeblattschädel症候群(Holtermuller & Wiede—mann,1960)8)は英語でcloverleaf skull症候群(Com—ings,1965)6)と呼ばれ,その名のようにクローバー葉状の頭の形をしたcraniofacial dysostosisの1つの型で,水頭症を伴う.その臨床的特徴は両側冠状縫合および両側人字縫合早期癒合症があり,これに水頭症を伴うために両側側頭鱗ならびに大泉門部に向って脳が突出するためにクローバー葉頭蓋となる.また,著しい眼窩狭小により高度の眼球突出がみられる.そのほか,離眼症,平坦な鼻,耳介低位,上顎骨形成不全などの顔面骨の異常も伴うために,極めてグロテスクな顔ぼうを示す.全身的には,ときとして骨異栄養症の合併により,四肢骨,特に大腿骨や橈骨・尺骨の発育障害により肘関節の拘縮をみることがある2).また,高位硬口蓋のために呼吸障害を生じることがある,などである.この奇形に関してHoltermuller & Wiedemann8)やPartingtonら11)によって文献的な考察が,またMuller & Hoffman10)により外科的治療についての検討が報告されている.しかし,本疾患に対する直達手術に関する報告は数編をみるに過ぎない1-3,10,12-14)

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I.はじめに

 骨腫(osteoma)は頭蓋骨および顔面骨に好発する病変で,副鼻腔の中では前頭洞に最も多い,しかし,蝶形骨洞発生例は極めて少なく,これまでに16例の報告をみるにすぎず,このうち組織学的に証明されたものは2例だけである,最近われわれは,蝶形骨洞に発生した骨腫の2手術例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 小児期における下垂体腺腫は稀であり,成人と比べその特殊性,特に治療の特殊性について充分考慮しておく必要がある.今回われわれは8歳女児に見られた成長ホルモンおよびプロラクチン産生下垂体腺腫の1例について報告するとともに文献的に検討した.

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I.はじめに

 小児の脳血管障害は新生児期の出血性病変を別とすれば,脳底部異常血管網症(モヤモヤ病)は例外として一般的には稀である1,7,21,23).特に一次的病変としての脳血管閉塞性病変は少なく,その病因を特定し得ないことも少なくない.このことは,成人では加齢に伴う脳血管の粥状硬化を背景として,70-80%が脳血管閉塞性病変であるのと著しい対照を示している1).しかし成人でも若年層になるほど動脈硬化症の関与は少なく,Resch &Baker22)によれば40歳以下では動脈硬化症の所見を欠くものが男性で71.9%,女性で79.2%あり,脳動脈硬化症が決して脳血管障害の主要因子ではなく,代わりに自己免疫病変による血管炎関与の可能性が示唆されている1,23)

 一方,小児における脳血管閉塞性病変の多くのものは乳幼児期に発生し,中大脳動脈(Mc)域に梗塞巣をつくるとされているが,その病因は不明のことが少なくない12,16-18,21)

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
14巻12号 (1986年11月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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