関節外科　基礎と臨床 42巻9号 (2023年9月発行)

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特集　変わりゆくTKAのトレンド

introduction 岡崎　賢 42巻9号 , 2023年9月 , pp.945-945

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Coronal Plane Alignment of the Knee（CPAK）分類で予測される生来の膝冠状面アライメント“constitutional alignment” 豊岡　青海 , 中川　匠 42巻9号 , 2023年9月 , pp.946-953

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生来の膝アライメントである“constitutional alignment”を再現することで，人工膝関節全置換術（total knee arthroplasty；TKA）術後の患者満足度が向上するのではないかという考えがあり，それを再現するためのkinematic alignmentの概念が広まってきた。従来は進行した変形性膝関節症患者を目の前にして，その人の生来のアライメントを推測することが難しかったが，MacDessiらが提唱したCoronal Plane Alignment of the Knee（CPAK）分類を用いることで，生来の膝の冠状面形態を類推することができるようになった。この分類は今後膝アライメントを語るうえでの共通言語になる可能性があり，膝関節外科医は十分に理解する必要がある。

TKAアライメントのコンセプト－Mechanical alignmentからpersonalized alignmentへ平中　崇文 42巻9号 , 2023年9月 , pp.954-964

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半世紀以上にわたって行われてきた一律理想型を目指すmechanical alignment（MA）法から，患者個別のアライメントを目指す方向に時代は流れつつある。この方法としてはkinematic alignment（KA）法が広く知られている。これは従来のmeasured resectionの究極の姿であり，他にもgap balancingの延長であるfunctional alignment，アライメントに安全域を設けるrestrictedという方法も提唱されている。従ってMAに対してはKAより上記のアプローチを包括したpersonalized alignment（PA）という用語がふさわしいと考える。術者は，今どのアプローチでPAを行っているのかを明確にしつつ，よりよいPAのゴールを目指す必要がある。

Kinematic alignment TKAの臨床成績福島　重宣 42巻9号 , 2023年9月 , pp.965-974

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近年，わが国でもkinematic alignment total knee arthroplasty（KA TKA）の報告がなされるようになった。脛骨コンポーネントの内反設置のみに関心がもたれているようであるが，大腿骨の骨切り方法，関節面の回復，靱帯の温存による臨床成績の向上が期待されている。本稿では，2008年のHowellの報告から始まり，日本人でのtrue KA TKAの成績について述べる。

制限なしkinematic alignment法による人工膝関節置換術の手術手技－Caliper法とsoft-tissue respecting法について－曽田　是則 , 中村　光宏 , 加納　利哉 42巻9号 , 2023年9月 , pp.976-984

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Kinematic alignment法による人工膝関節置換術とは，表面置換（more resurface）と軟部組織尊重（soft-tissue respect）を基本理念とし，患者個々のジョイントラインを復元する方法である。現在行っているsoft-tissue respecting法による制限なしkinematic alignment法の手技を詳述する。

Functional alignmentの実際石田　一成 , 柴沼　均 , 中野　直樹 , 松本　知之 , 黒田　良祐 42巻9号 , 2023年9月 , pp.985-990

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Functional alignmentは，関節周囲の軟部組織剥離を最小限にとどめ，骨切り量やその角度ならびにインプラント設置の調整によって，関節面傾斜と高位の維持，伸展・屈曲ギャップの良好なバランス獲得を目指すものである。本稿では，functional alignmentの説明と当院での手術の解説ならびにその限界や注意点について述べる。

コンピュータシミュレーションから考えるTKAアライメントのセーフゾーン栗山　新一 , 松田　秀一 42巻9号 , 2023年9月 , pp.991-999

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人工膝関節のアライメントは，冠状面では生理的な下肢全長内反と膝関節面内方傾斜の再現がトピックスであるが，これらの組み合わせ方次第では，術後膝関節動態や長期成績の可否に影響を及ぼす。しかし，術後患者立脚型評価での検討が中心となり，運動力学的な解析は乏しい。そこで，筋骨格コンピュータシミュレーションを用いて，バイオメカニクスの観点から術後膝関節動態の向上と合併症の予防を両立可能なアライメントのセーフゾーンについて検証を行う。

TKAにおけるACL機能龍　啓之助 42巻9号 , 2023年9月 , pp.1000-1007

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BCS-TKA（bi-cruciate substituting total knee arthroplasty）において，従来型人工膝関節全置換術（total knee arthroplasty；TKA）と同様の適応および手術手技で施行することで同等の臨床成績の獲得が可能であり，より良好な術後膝屈曲角度の獲得が可能であった。また，BCS-TKAはACL（anterior cruciate ligament）機能とPCL（posterior cruciate ligament）機能を再現しており，従来型TKAと比較してより良好な術後患者満足度の獲得が可能であった。筆者らはACL機能を考えたBCS-TKAを第一選択として手術を行うことが今後のnew normalとなりうると考えている。

モバイルベアリングTKAの利点伊藤　匡史 , 岡崎　賢 42巻9号 , 2023年9月 , pp.1008-1013

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モバイルベアリングTKA（total knee arthroplasty）は，安定性とkinematicsという二律背反する要素を両立する理論的優位性をもって導入された。固定式ベアリングに対する優位性のエビデンスはないが，さまざまな摺動面形状をもったモバイルベアリングTKAが存在するため成績比較の解釈は注意深く行う必要がある。本稿では，posterior stabilized型とcruciate sacrifice型のモバイルベアリングTKAの特徴と成績について述べる。

Medial pivot型TKAの利点佐藤　卓 42巻9号 , 2023年9月 , pp.1014-1018

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Medial pivot型total knee arthroplasty（MP TKA）は，その形状的特徴がもたらす低摩耗性と関節安定性によって，長期耐用性と高い患者満足度が期待できる機種である。また，適応が広く手技も容易であり，患者，術者いずれに対しても許容範囲の広い機種である。

セメントレスTKAの再興－セメントレスTKAの利点と欠点，臨床成績－三箇島　吉統 , 岡崎　賢 42巻9号 , 2023年9月 , pp.1019-1025

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セメントレスTKA（cementless total knee arthroplasty）の利点は，①　手術の効率化と手術時間の短縮，②　生物学的固定性の獲得，③　セメントによるdebondingやthird body wearがないこと，などである。一方，欠点としては，①　正確な骨切りが必要であること，②　骨粗鬆症患者には適応とならないことである。長期臨床成績は，セメントTKAと同様に良好であるという報告が多い。現行インプラントの特徴と臨床成績について解説した。

ロボット支援人工膝関節手術の目指す道桑沢　綾乃 42巻9号 , 2023年9月 , pp.1026-1038

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変形性膝関節症に対する人工膝関節置換術では，2023年現在，わが国でも4社の手術支援ロボットが上市され普及が進んでいる。ロボット支援手術が特別な治療選択肢ではなくなりつつあるなかで，人工関節置換術におけるロボットの位置付けはどのように進化していくのだろうか。各社ロボットの比較とそれぞれの特徴を述べるとともに，今後の展望を考察する。

TKAにおけるデジタルツールの利用－簡易ナビゲーション，拡張現実（AR）技術の利用，スマートフォン用治療支援アプリなど－水野　清典 , 荒木　祥太郎 , 仲野　槙志 , 和田　治 42巻9号 , 2023年9月 , pp.1039-1050

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はじめに簡易ナビゲーションとして加速度計・角速度計を用いたKneeAlign2®と拡張現実（augmented reality；AR）機能を用いたOrthoRaptor®を紹介する。いずれも機能は限定されるが，導入費用がかからず安価で利用でき高精度なナビゲーションである。次いで，スマートフォン用治療支援アプリmymobility®を紹介する。周術期管理を効率化する一方，患者の術中・術後の情報をクラウドサーバーに伝達するIoT Hubとしての利用が試みられている。

連載　傷をきれいに治す～外科的治療成功への第一歩～

第1回

「創傷治療の基本の「き」」松村　一 42巻9号 , 2023年9月 , pp.1052-1057

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手術の傷をきれいに治すためには，第一段階として，良好な一次治癒にて創が閉鎖することがまず必要である。感染や創哆開で二次治癒となり，追加の手術が必要になった場合には，変形や大きな手術痕を残すことになる。このため，傷をきれいに治すためには，創部をトラブルなく，一次治癒させることはその第一段階となる。創部のトラブルとしては，「創部に死腔が生じて内出血が溜まり，それが感染を誘発する場合」，また「創表層の閉鎖が不十分なため，創表面から細菌のコンタミネーションが起こり，創感染に至る場合」などである。また，一次治癒した傷でも，肥厚性瘢痕を生じてしまえば，きれいな治癒とはならない。肥厚性瘢痕を生じにくい切開の向きを選択したり，術後の後療法にて肥厚性瘢痕を防ぐ必要がある。つまり，確実な一次治癒と肥厚性瘢痕の回避が，“傷をきれいに治すための創傷治療の基本”となる。

連載　話したくなる　整形外科　人物・用語ものがたり

第14回

「偉大なる改革者，Codmanの考える医療：Codman triangle」小橋　由紋子 42巻9号 , 2023年9月 , pp.1058-1059

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調べものをしているときに「Codman」の名前が目に留まった。何の気なしにCodmanを検索してみると，ボストン生まれ，ハーバード・メディカル・スクール卒業，マサチューセッツ総合病院（Massachusetts General Hospital；MGH）勤務の医師とのこと。若かりし頃，私もMGHに留学していたので，彼に時代を超えた親近感をもってしまった。私がいた当時，MGHのMusculoskeletal（MSK，骨軟部領域）セクションは病院内のビルの1フロアすべてを占めており，MSK専門のCT，MRI，超音波，透視，血管撮影室がゆったりと設置されていた。しかも，放射線科診断医（MSKの読影のみ行う）の数の多いこと！　うらやましいなと思ったものである。

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目次 42巻9号 , 2023年9月 , pp.942-943

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学会案内・お知らせ 42巻9号 , 2023年9月 , pp.1060-1060

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バックナンバー・次号予告 42巻9号 , 2023年9月 , pp.1062-1062

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投稿・執筆規定 42巻9号 , 2023年9月 , pp.1063-1063

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編集後記 42巻9号 , 2023年9月 , pp.1064-1064

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基本情報

関節外科　基礎と臨床
42巻9号
(2023年9月発行)

電子版ISSN：2423-9666 印刷版ISSN：0286-5394 メジカルビュー社

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第9位橈骨遠位端骨折変形癒合に対するclosed wedge矯正骨切り術織田崇,和田卓郎関節外科　基礎と臨床 44巻 6号 pp. 626-631 (2025年6月19日) メジカルビュー社
第10位「膝蓋骨置換 vs. 非置換：置換だけが正解ではない，だけど…」格谷義徳関節外科　基礎と臨床 44巻 6号 pp. 638-640 (2025年6月19日) メジカルビュー社

関節外科 基礎と臨床 42巻9号 (2023年9月発行)

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連載 話したくなる 整形外科 人物・用語ものがたり