手術 75巻1号 (2021年1月)

総特集 消化器・一般外科領域の手術教育を考える

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手術教育を考える前に「手術とは何か」について少し考えておく必要がある。

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IRCAD Strasbourgは1994年に設立された腹腔鏡手術のトレーニングセンターおよび研究所であり,毎年多数のトレーニングコースが開催されており,100カ国以上から6,000人以上の医師が参加している。

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実際の内視鏡外科手術を経験している時間以外に,手技の向上が期待できるトレーニング方法はいくつかあるが,本稿ではボックスを用いた物理的練習について言及する。

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医学教育において手術手技修練は,長らく手術書と手術室における実習・実践から成り立っていた。開腹手術では術野の細部にまで及ぶ記録が難しいことが多く,実際の術野がどうなっており,どのような考えでその場その場の判断を下していたかが手術に携わる者にしかわからない,いわばブラックボックスの要素が少なからず存在していた。1990年代の内視鏡外科手術の導入後,術野のすべての情報が術者と共有できるようになり,これは手術教育の変革に大きな影響を与えた。画像・情報処理技術の向上とともに,内視鏡外科手術における術野の再現能力が著しく改善され,教育効率を進化させたシミュレーターが開発されるに至った。

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これまでの手術教育は,主として座学から得られる知識と実際の手術の場で上級医から学ぶ手術手技,いわゆるOn-JT(on the job training)での経験の伝達により行われるものが主体であった。しかし,現在の高度で複雑な手術治療を安全に提供するためには,立体的な解剖構造のより深い理解と手術手技の効率的な習得が重要であり,手術室外でのトレーニングOff-JT(off the job training)の必要性が広く認識されるようになった。

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われわれが普段行う外科手術は先人たちの手術手技に対する創意工夫に加え,高周波手術装置(電気メス)や超音波凝固切開装置に代表されるエネルギーデバイスの発展に支えられ,術式のみならずわれわれの手術手技そのものにも革新をもたらした1)。とくに内視鏡外科手術においてはその革新が顕著である。いまやエネルギーデバイスの使用方法も「手術手技」の1つになったと言っても過言ではない。

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手術記録の目的と意義は,何であろうか。手術症例の情報(術前診断,実際の肉眼所見と手術手技)としての意義は言うまでもなく,外科修練における自己の研鑽,医師・看護師といった医療チーム内での手術情報の共有,そして,術前・術後診断に関わった紹介医や内科医・病理医へのfeed-backと,その意義は多岐にわたる。

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近年,若手医師の外科志望者の減少が顕著となっている。その原因は,外科がいわゆる3K労働(きつい,汚い,危険)と認識されていることと,拘束時間が長く,緊急での呼び出しも頻繁でプライベートな時間をもてないこと,指導体制は旧態依然としており,パワーハラスメント的な指導体制で,「寝る暇があれば患者を診ろ」「習うより,慣れろ」「手術は見て習え」などの指導がかつては普通であったことなど,さまざま考えられる。

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腹腔鏡下胃切除(laparoscopic gastrectomy;LG)は早期胃癌に対する根治術の1つとして確立し1),現在では胃癌手術の約半分は腹腔鏡手術で行われている2)。しかし,開腹手術に比べて腹腔鏡手術は鉗子の可動域制限や手ぶれなどの技術的難点があり,ラーニングカーブが長いといわれている3)。この難点を克服すべく内視鏡手術支援ロボットが開発され,Intuitive Surgical社のda Vinci Surgical System®(DVSS)を使用したロボット支援手術が近年急速に発展してきている。

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肝切除の術式は多岐にわたることに加え,施設ごとに独自の手技があるため,各々の手技を説明するための手術書は多数出版されている。そのなかで外科的解剖や肝切除手技のコツなどの説明は豊富な記載がある。しかし,本特集のように若手外科医に対する手術教育に特化した文献は少ない。筆者もこれまで若手外科医の教育についてそれなりの経験はあるものの,自ら「教え方のコツ」を文章化したことはなかった。

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筆者に与えられたテーマは,胆道外科(胆石・胆嚢炎)の手術教育であるが,そのほとんどを占める胆嚢摘出術(以下,胆摘),とくに腹腔鏡下胆嚢摘出術(laparoscopic cholecystectomy;LC)を中心に述べる。

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胆道外科手術は高難度手術が多く,いわゆるhigh volume center以外では症例数も少ないのが現状である。このような状況下での胆道外科の手術教育は少ない症例数で行わねばならず,実際の症例経験だけでは不十分と考えられる。

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手術は手でするものではなく,頭でするものだ─これは,当科における重要な標語の1つである。医学は科学(サイエンス)としての側面と,技術(アート)としての側面があるといわれる。とくに手術分野はアートとしての技術が短期・長期の術後成績に及ぼす影響が大きい。外科医個々人のいわゆる「手先の器用さ」に差があるのは仕方がない(練習である程度までは到達できるが)。しかし,手術はあくまで「頭でするもの」なのである。

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虫垂炎は手術が必要な急性腹症のなかでは最も高頻度であり,虫垂切除術は確立された術式と考えられる。しかし,高度な炎症を伴う症例の難度は低くなく,術後の合併症もまれではない。一方で,虫垂炎手術は若手外科医の教育に欠かせない術式であり,教育的観点を省いて本術式を語ることはできないが,教育のために患者がデメリットを受けることは避けなければならない。

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結腸切除術は,消化器のメジャー手術といわれるもののなかで,比較的症例数が多く,若手が最初に執刀を経験することが多い。あらゆる高難度手術の基本となる手技が含まれており,たとえ手術が無事に終わったとしても,指導者による手術教育の良し悪しによって若手の手技向上の観点で得られるものも変わってくる。ここでは大腸外科(結腸)における手術教育について,off the job trainingとon the job trainingに分けて,当科の取り組みも含めて概説する。

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内視鏡外科手術がわが国に導入され30年近くが経過し,多くの領域で標準的な術式として普及してきている。現在では医師になって最初に経験する手術が内視鏡外科手術であることも多い。内視鏡外科手術で安全な手術を行うためには従来の開腹手術と異なる知識や技術の習得が必要となる。さらに近年ではロボット支援手術も出現し,腹腔鏡とはまた異なる技術の習得も重要となってきている。これらの習熟には早い時期からのトレーニングが望ましいと考える。

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鼠径部ヘルニア手術は年間およそ14万件1)行われ,実質臓器切除などを伴わない手術であることから外科修練医にとって執刀のチャンスが多い疾患である。とくに男性片側初発鼠径部ヘルニアは手術件数が一定数あり,予定手術がほとんどであるため,外科手術の入門として最適である。

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手術
75巻1号 (2021年1月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4423 金原出版

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