医学教育において手術手技修練は,長らく手術書と手術室における実習・実践から成り立っていた。開腹手術では術野の細部にまで及ぶ記録が難しいことが多く,実際の術野がどうなっており,どのような考えでその場その場の判断を下していたかが手術に携わる者にしかわからない,いわばブラックボックスの要素が少なからず存在していた。1990年代の内視鏡外科手術の導入後,術野のすべての情報が術者と共有できるようになり,これは手術教育の変革に大きな影響を与えた。画像・情報処理技術の向上とともに,内視鏡外科手術における術野の再現能力が著しく改善され,教育効率を進化させたシミュレーターが開発されるに至った。