看護研究 54巻4号 (2021年8月)

特集 —若手研究者が挑む—国際基準のエビデンス構築のための実験研究 徹底解説

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 本誌では2004年,「看護実践につながる実験研究」と題する特集を組みました(37巻1号)。EBP,implementation researchなどが大きな潮流となっている現在,エビデンスを創りだす実験研究の重要性は,一層高まっていると思われます。

 その中で,日本における実験研究はいまどのような状況にあるでしょうか。昨年の第40回日本看護科学学会学術集会において,「看護実践における国際基準のエビデンス構築の試み—臨床での看護実践に生かせる実験研究をしよう」というテーマのもと,意義ある交流集会が行なわれました。本特集では,この交流集会を企画し,実験研究の成果を積極的に海外に発信してきた気鋭の若手研究者の先生方とともに,改めて実験研究の基本から,若手研究者としてのさまざまな経験まで,多様な要素を織り交ぜながら徹底解説し,実験研究の醍醐味と意義を見いだす特集企画を組むこととしました。

1.実験研究の基礎知識 山上 優紀
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実験研究には,多くの専門的な用語が存在する。本稿では,実験研究にまつわる用語と基礎的知識を説明する。

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本稿では,近年の看護系ジャーナルにおける研究の動向を扱った以下のレビュー論文をもとに,看護学領域におけるの実験研究の国際的な動向を紹介する。

 

 論文1: A descriptive study of research published in scientific nursing journals from 1985 to 2010

【1985年から2010年の看護学領域における実験研究のトレンド】

—Adela Yarcheski(USA)ほか

論文2: The research evidence published in high impact nursing journals between 2000 and 2006: A quantitative content analysis

【2000年から2006年の看護学領域における研究トレンド】

—Stefans Mantzoukas (Greece)

論文3: Randomized Controlled Trials and Quasi-Experimental Studies Published in Nursing Journals: Findings From a Scoping Review With Implications for Further Research

【2009年から2016年の看護学領域における研究トレンド】

—Silvia Gonella (Italy)ほか

論文4: Endorsement of the CONSORT guidelines, trial registration, and the quality of reporting randomised controlled trials in leading nursing journals: A cross-sectional analysis

【看護学領域におけるランダム化比較試験の質】

—Andrew Jull (New Zealand)ほか

3.実験研究に必要な要素 山上 優紀
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本稿の前半では,実験研究を行なうために必要な要素を紹介する。後半では,2020年開催の第40回日本看護科学学会学術集会で実施した実験研究に関する交流集会の参加者へのアンケート調査に基づいて,看護学領域の研究者における実験研究の需要と必要な要素を紹介する。

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本稿では,研究の準備にあたり必要な基礎知識について簡単に説明する。

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 本稿では,臨床での疑問からリサーチクエスチョンを立て,その答えを導く研究の組み立て方について,私が実際に行なった研究をもとに紹介する。

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 私は大学院の修士課程(実際は博士前期課程だった)に入学した当初は,実験研究を行なうつもりはなかった。しかし,よいテーマが決まらず煮詰まっていたとき,指導教官の「実験研究とか(してみたら)どう?」という提案に対して,「それならば,こういった研究がしたい」と答えた。ある研究テーマが即座に浮かんできたのである。そこからは水を得た魚のように筆が進み,翌週には何ページにもわたる研究計画の素案を作り上げ,指導教官たちを驚かせた。おそらくそれは,心の中でずっと気になっていた疑問だったのだろう。そのような始まりであった実験研究は奥が深く,丁寧にかかわった分だけ成果が出る。そして,結果は簡潔明瞭で,誰しもに理解されやすい。こうした実験研究に魅力を感じ,修士課程を修了し博士課程に進学しても,私は自分の意志で実験研究を行ない続けた。本稿では,そんな私の実験研究の経験と学びを紹介する。

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 本稿では,臨床における実験研究の実際について,私の経験を踏まえて説明していく。実験室等で行なう実験研究とは異なり,臨床での実験研究は多くの場合,対象者が患者になる。また,セッティングは施設内の場所を使用させてもらうことになるため,施設の協力は不可欠であり,かつ,スタッフの理解も必要である。私がいかにして臨床研究を実施してきたのかという具体的な研究内容,および失敗談から学んだ研究方法の精錬の道筋について紹介していきたいと思う。

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—本日はありがとうございます。まずは簡単な自己紹介と,現在取り組まれているご研究についてお話しいただけますでしょうか。

山上 山上優紀です。大学を卒業後,看護師をしていましたが,その後大学院に進学し博士号を取得しました。修了後にご縁があって奈良県立医科大学の疫学・予防医学講座で助教として就職させていただきました。現在は,研究活動としては講座主宰の大規模コホート研究(観察研究)で光や温度,音などの住環境や身体活動,入浴などの生活習慣を実測し,健康や生体リズムに及ぼす影響を調査しています。いきなり実験研究と違っていてすみません(笑)。

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はじめに

 多くの国立大学大学院博士後期課程の学位認定として用いられる基準に,英語論文の採択が挙げられている。おそらくこれは,博士の学位を取得する上で大きな難題になっている。かく言う私も,修士課程時にトントン拍子で2つの英語論文が採択された経験から,博士後期課程でもそのハードルを問題なくクリアできるだろうと高を括っていたところ,足元をすくわれることとなった。13回ものRejectを受けたのである。当然,論文の質が原因ではあるが(研究手法しかり,文章の書き方しかり…),それでもさすがに13回のRejectを受けると,次のジャーナルの選択において路頭に迷うことになる。

 世界には数多くのジャーナルがあり,その質は玉石混淆である。これまでさまざまな形で論文投稿を重ねてきた私自身の経験から,実際どのようなジャーナルを探していたか,そして,最低限どのような基準をクリアするジャーナルならば選択して問題ないかについて,主にこれから研究者をめざそうとする大学院生を意識しつつ,述べていきたいと思う。

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はじめに

COVID-19と看護職のキャリア再考

 看護職の働き方やキャリアは,専門職としての経験や専門性だけではなく,プライベートや家庭を含めた影響を強く受ける。そのため,COVID-19の感染拡大は,看護職の働き方やキャリア構築への認識に大きな影響を及ぼしている。感染拡大という事態に直面して,1人ひとりが専門職としてどのような形で医療にコミットメントしていくべきか,家族を含めた自身の生活をいかに守るか,自身の今後のキャリアをどのように考えていくか,について少なからず再考を迫られたのではないだろうか。パートナーや子どもとともに暮らす人は,自身が全面的にコミットメントすることの引き換えとして,パートナーや子どもが周りからどのような目で見られるかを,意識せざるを得なかったと考えられる。親族の介護に携わる人は,当然,被介護者への感染リスクを考慮せざるを得なかったであろう。生活基盤に影響があった人は,その維持を目的とした選択や進路変更を迫られたであろう。そして研究を志す人は,フィールドに入ることが困難となったことで研究計画の大幅な変更を迫られたのではないか。自身の生涯にわたる生活や人生のあり方をも模索しつつ,「キャリア」(生涯キャリアともいう)の再考が生じていると思われる。

 いやそもそも,看護職としてのキャリアを歩み始めたばかりの,平常時においてさえ職業移行に困難を抱える新人たちは,この事態に巻き込まれ,自身のキャリアの指針を定める機会も奪われ,自身にとっての看護の意味さえ見出せないままに,ただひたすら目の前で起こっていることに従事させられているという認識に陥り,疲弊しているかもしれない。

 いずれにせよ,予定されていなかった事態に直面し,また社会的な文脈に身を置きながら,働く自身の人生として何を重んじていきたいのか/いくべきなのかについて,立ち止まって考え直す必要性が生じ,それを求められている時機—危機といっても過言ではない—に,看護職は直面している。

連載 Ska vi FIKA? スウェーデンでの研究生活・4

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私たちの人生には結婚や妊娠,出産,育児,また介護などさまざまなライフイベントがあり,ライフイベントを機にキャリア選択に悩むことが,特に女性の場合,多いのではないでしょうか。スウェーデンと聞くと,男女平等,女性の活躍,待機児童がいない国,そんなイメージを持たれている方も多いように思います。本稿では,看護職のキャリア形成とライフイベントについて,私の経験をまじえながらスウェーデンの制度を中心にご紹介したいと思います。

連載 集まる つながる 広がる 若手研究者のバトン・19

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若手研究者は,今日も看護の未来に向けて疾走中。

ここはそんな同じ目標を抱く者同士が,ぷらっと立ち寄り語り合う場所。

誌面をフィールドに,思いをバトンに乗せて語り継いでいきます。

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 本書は,M-GTAの「定本」とある通り,著者である木下氏がオリジナル版GTAに触発され,30年にわたる試行錯誤を経て到達した決定版である。また,「M-GTAを論ずることは質的研究を論ずること」と謳い,質的研究固有の人間観と理論的基盤をもとに方法論を構築した斬新な書籍である。

 定本とされる理由は,本書の構成が物語っている。4部構成のPart1では,M-GTAの基本特性と方法論的基盤について,オリジナル版GTAからいかに抜本的に再編成したのかが,その根拠とともに説得的に論じられる。Part2では,分析方法と分析プロセスが詳細に説明されるが,単なる手順ではない。例えば,GTAは参加観察による調査から構築されたが,現在,多くのGTA研究はインタビューをデータとする。両者のデータの質の違いを根拠に,データの性質に応じた方法論が再構成され説明される。Part3では,学習方法としてのグループワークの仕方が提案される。グループでの学習は質的研究には不可欠であり,すでに行なわれているであろうが,そこで何が起こり得るのかが分析されることで,意義が明確になる。最後のPart4では,視点を“領域化”した質的研究に向け,コーディングや査読のあり方,批判的実在論との関係からM-GTAの可能性が検討される。

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目次

INFORMATION

今月の本

バックナンバー

次号予告・編集後記

基本情報

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看護研究
54巻4号 (2021年8月)
電子版ISSN:1882-1405 印刷版ISSN:0022-8370 医学書院

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