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はじめに
COVID-19と看護職のキャリア再考
看護職の働き方やキャリアは,専門職としての経験や専門性だけではなく,プライベートや家庭を含めた影響を強く受ける。そのため,COVID-19の感染拡大は,看護職の働き方やキャリア構築への認識に大きな影響を及ぼしている。感染拡大という事態に直面して,1人ひとりが専門職としてどのような形で医療にコミットメントしていくべきか,家族を含めた自身の生活をいかに守るか,自身の今後のキャリアをどのように考えていくか,について少なからず再考を迫られたのではないだろうか。パートナーや子どもとともに暮らす人は,自身が全面的にコミットメントすることの引き換えとして,パートナーや子どもが周りからどのような目で見られるかを,意識せざるを得なかったと考えられる。親族の介護に携わる人は,当然,被介護者への感染リスクを考慮せざるを得なかったであろう。生活基盤に影響があった人は,その維持を目的とした選択や進路変更を迫られたであろう。そして研究を志す人は,フィールドに入ることが困難となったことで研究計画の大幅な変更を迫られたのではないか。自身の生涯にわたる生活や人生のあり方をも模索しつつ,「キャリア」(生涯キャリアともいう)の再考が生じていると思われる。
いやそもそも,看護職としてのキャリアを歩み始めたばかりの,平常時においてさえ職業移行に困難を抱える新人たちは,この事態に巻き込まれ,自身のキャリアの指針を定める機会も奪われ,自身にとっての看護の意味さえ見出せないままに,ただひたすら目の前で起こっていることに従事させられているという認識に陥り,疲弊しているかもしれない。
いずれにせよ,予定されていなかった事態に直面し,また社会的な文脈に身を置きながら,働く自身の人生として何を重んじていきたいのか/いくべきなのかについて,立ち止まって考え直す必要性が生じ,それを求められている時機—危機といっても過言ではない—に,看護職は直面している。
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