看護研究 49巻3号 (2016年6月)

特集 看護におけるシステマティックレビュー

『看護研究』編集室
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 EBP(evidence based practice)という言葉は,わが国でもかなり定着しているように思われます。目下看護研究においては,看護実践に寄与するエビデンスの創出と確立をめざすとともに,それを現場とどのように協働しながら,どのように臨床現場に適用し根づかせていくかが大きなテーマとなっています。

 システマティックレビューは,そうしたEBPのプロセスの中でも重要な役割を占めています。研究を進めていく上で,「何が明らかになっていて,何が明らかになっていないのか」を検証するためにもきわめて重要なステップであり,国際的にみても昨今欧米やアジア諸国の一部において,博士課程の研究を行なう前にまずはシステマティックビューの実施が課されるといった動きもあります。

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はじめに

 近年,システマティックレビュー(Systematic Review;SR)に対する関心が高まっている。本稿では,コクランにおけるSRの基礎や方法を解説し,今後の展望を探っていく。まずはコクランに関する概要を紹介し,それを踏まえて,実際にSRを実施するための手法であるリサーチクエスチョンの立て方や網羅的文献検索の方法と批判的吟味,リスク・オブ・バイアス(Risk of Bias)について解説するとともに,メタアナリシスの概要を述べることとする。

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はじめに

 エビデンスに基づいた実践,いわゆるEBP(Evidence-Based Practice)が唱えられて久しいが,EBPにおけるSR(Systematic Review;システマティックレビュー)の占める重要な役割は,まだ十分に理解されているとはいいがたい。SRはヘルスケア実践にエビデンスを導入するにあたり,系統的な方法論上のルールに従いベストエビデンスを特定するための研究方法論である。本稿では,看護学研究領域や他の学問領域から近年注目を集めている質的研究のSR方法論の,現状と動向の考察を試みるものである。一次研究であっても,質的研究の現状を端的に解釈し説明することは容易ではない。世界中の質的研究者それぞれのよりどころとする研究哲学・研究分野・地理的言語的背景や学閥の違いなどにより,多様な解釈が可能であるためだ。これは二次的データを扱う質的研究のSR(以下,質的SR)の場合でも全く同様で,比較的新しい研究分野であるがため,質的SRを取り巻く状況はさらに混沌としている。

 そうした状況の解釈と紹介を試みるにあたっては,質的研究パラダイムとEBPに関わる筆者の立ち位置と背景を示しておくことが適切と考える。筆者は,看護学領域におけるSRの開発と普及に取り組んでいるJBI(Joanna Briggs Institute;ジョアンナブリッグス研究所)で,主に質的SRやMixed Methods SRの教育・研究に関わってきた。2012年度より日本の現職で看護学教育・研究に携わるかたわら,JBIの正式なSRトレーニングプログラムの認定講師として,主にJBIセンターでの教育プログラムに関与している。本稿は,JBI勤務時代の経験や知識をもとに執筆しているため,多分にJBIの考える質的SR像を反映してはいるが,JBIとは異なる筆者個人の見解も含んでいることをご承知願えればと思う。

 なお,「メタ統合」と「質的SR」は現在では同義語として使用されることが多いが,本稿では「メタ統合」は,採用した一次研究データの統合部分を特に指し,「質的SR」は,テーマ設定から文献検索〜質的データ統合,考察,結論までの一連のプロセス全体を指すこととする。

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 “看護研究を行なう場合,研究に取り組む研究者は当該研究の倫理的問題を整理し,研究対象者(研究協力者)に対する倫理的配慮を十分に検討し対応することは,改めていうまでもないことである”というテーゼは,果たして本当にそうなのだろうか。

 筆者らは,研究対象者に対する倫理的配慮について,「研究対象者のための倫理的配慮となっているのか?」と疑問をもつ場面に遭遇することが多い。そのようなことから,「いったい,研究者と研究対象者の間で何が起こっているのか? もしかすると研究対象者は,研究者に不信や不満をもつ状況になっているのではないか?」と強い疑念をもつに至った。

 そこで,本特別記事では4回にわたり,研究対象者に対して倫理的問題となると考えられることや,そして,それが現実に倫理的問題となるのであれば何が課題となるのかということについて検討し,研究対象者の立場に立った研究倫理を再考することとしたい。

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はじめに

 臨床的看護研究は,看護実践を導き,そしてクライエントの健康と生活の質を改善するようにデザインされている(Polit & Beck, 2012, p.3)。看護実践を導くために欠かせないのは,エビデンスに基づく看護の提供に直接的あるいは間接的に影響する既存の知識を検証し,洗練させること,ならびに,そのように影響する新たな知識を創出することである(Grove, Burns, & Gray, 2013, p.2)。このような知識は,実践についてのある一つの問題領域に関わっている。つまり,それは,看護実践の研究にとって適切であるのはどのような観点であるのか,という問題領域である。

 本論文1の目的は,看護研究における実践に関する知識についての基本的なアプローチのいくつかを検討することである。最初に,応用健康科学に関する一つの基準(criterion)としての「一般化(generalization)」の論点を明らかにする。というのは,一般化,あるいは一般化可能性(generalizability)の主張や要求がなされるときに,さまざまな問題が生じるからである。その典型的な問題が起こるのは,特定の臨床状況の中の実践に看護研究が関わる場合である。このような状況における臨床的な出遭いは,しばしば流動的な性質を備えており,その結果,臨床的状況は,「標準化されている規則や手続きに挑戦する」(Benner, Sutphen, Leonard, & Day, 2010, p.206/早野ZITO訳,2011,p.298)。要するに,看護実践を適切に導くためには,看護学における一般的な知識のみでは十分ではないのである(Craig & Stevens, 2012, pp.11─13)。

 続いて,実践についての知識に関するハンス=ゲオルク・ガダマーの概念を考察する。ガダマーは,アリストテレスの倫理学における「プロネーシス(phronesis)」を検討し,それを「人間科学が自ら自身を理解するための唯一の方法論的モデル」とみなしたからである(Gadamer, 1996[1963], p.18)。

 最後に,看護研究における実践に関する知識の基本的枠組みを提起する。この枠組みにおいて,知識についての二つのアプローチが原理的に区別される。第一は一般化志向のアプローチであり,第二はケース志向のアプローチである。これら二つのアプローチは相補的であり,それぞれの仕方によって看護学に貢献する。

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目的:本研究の目的は,小児病棟において看護師が「わざ」と語る熟練した技術がどのように伝達されているのか,その伝達過程を明らかにすることである。

方法:参与観察とインタビューによるエスノグラフィーで行なった。フィールドは総合病院の小児病棟で,研究参加者は看護スタッフを中心としたそこに交流する全ての人々である。

結果:病棟では看護師が「わざ」を学ぶことを意図していなくても,その場に居合わせ,大切だと思うことで,結果として「わざ」習得への一歩を進んでいくという過程がみえてきた。「わざ」は看護師間の雑談という場を通して,看護師各自がその能力に応じて共同改良することによって意図せず伝達されていた。その過程は,①問題感覚と関心をもつことによって,②アイディアを共有し,③実践のヒントを獲得し,④実践する,という4つの反復的過程であり,同僚との自由な対話による知識の共有と自分の実践とを繰り返す中に存在していた。

 知識の共有に決定的な役割を果たしていたのが,病棟内のどこでも必要な情報を提供してくれる非公式な看護師同士の交流である。看護師は休憩室やナースステーションの一角などのさまざまな雑談の中で自分の実践のヒントとなる必要な情報を得ていく。「わざ」の言語化し難い部分はメタファーやオノマトペを用いて,成功例や失敗例も語りによって共有する。雑談という場における信頼の保証された,安心感のある,互いを認め合う相互行為を通して,「わざ」は創造,拡大,交換されていた。

考察:この一連の過程は「わざ」の社会的学習過程であり,伝達過程とみることができると考えた。そして,雑談という場に参加することそのものが状況づけられた学習であり,伝達過程の一部であると考察した。

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海外文献を読む醍醐味

深堀 本学の看護システムマネジメント学分野では,「Journal Watch」という名称のもと,文献を読む活動をこれまで2年ほど続けてきました。現在,ある程度定着して効果もあがっているように思いますが,改善点もあると思います。昨年はこの取り組みを『看護研究』誌の連載という形で紹介してきましたが,この機会にこれまでの経験を振り返り,この取り組みをさらに意義あるものにできるような議論ができればと思っています。

 最初に,「この活動で意図していたこと」「活動から学んだこと」について議論したいと思います。研究に関するコミュニケーション能力や議論を行なう能力,また自分の関連分野以外の研究に関心をもつことの意義などについてです。加えて,海外の文献を読んで感じることや,複数の大学院生が議論するにはどういう形が最も効果的かなど,率直なところをお話しください。その上で,将来的に,こうした活動を踏まえてどのような研究を行なっていきたいと考えるか,あるいはどのような研究者をめざすか,議論できればと思います。まずこの活動から学んだことについて,お願いします。

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欧文目次

INFORMATION

今月の本

基本情報

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看護研究
49巻3号 (2016年6月)
電子版ISSN:1882-1405 印刷版ISSN:0022-8370 医学書院

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