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はじめに
臨床的看護研究は,看護実践を導き,そしてクライエントの健康と生活の質を改善するようにデザインされている(Polit & Beck, 2012, p.3)。看護実践を導くために欠かせないのは,エビデンスに基づく看護の提供に直接的あるいは間接的に影響する既存の知識を検証し,洗練させること,ならびに,そのように影響する新たな知識を創出することである(Grove, Burns, & Gray, 2013, p.2)。このような知識は,実践についてのある一つの問題領域に関わっている。つまり,それは,看護実践の研究にとって適切であるのはどのような観点であるのか,という問題領域である。
本論文1の目的は,看護研究における実践に関する知識についての基本的なアプローチのいくつかを検討することである。最初に,応用健康科学に関する一つの基準(criterion)としての「一般化(generalization)」の論点を明らかにする。というのは,一般化,あるいは一般化可能性(generalizability)の主張や要求がなされるときに,さまざまな問題が生じるからである。その典型的な問題が起こるのは,特定の臨床状況の中の実践に看護研究が関わる場合である。このような状況における臨床的な出遭いは,しばしば流動的な性質を備えており,その結果,臨床的状況は,「標準化されている規則や手続きに挑戦する」(Benner, Sutphen, Leonard, & Day, 2010, p.206/早野ZITO訳,2011,p.298)。要するに,看護実践を適切に導くためには,看護学における一般的な知識のみでは十分ではないのである(Craig & Stevens, 2012, pp.11─13)。
続いて,実践についての知識に関するハンス=ゲオルク・ガダマーの概念を考察する。ガダマーは,アリストテレスの倫理学における「プロネーシス(phronesis)」を検討し,それを「人間科学が自ら自身を理解するための唯一の方法論的モデル」とみなしたからである(Gadamer, 1996[1963], p.18)。
最後に,看護研究における実践に関する知識の基本的枠組みを提起する。この枠組みにおいて,知識についての二つのアプローチが原理的に区別される。第一は一般化志向のアプローチであり,第二はケース志向のアプローチである。これら二つのアプローチは相補的であり,それぞれの仕方によって看護学に貢献する。
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