臨床皮膚科 32巻10号 (1978年10月)

図譜・432

マダニ皮膚寄生例 滝野 長平
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患者 28歳男,事務員

初診 昭和51年6月28日

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 その経過中にlymphomatoid papulosis類似の組織像を呈したpityriasis licheno—ides chronicaの23歳,女子例を経験した.Lymphomatoid papulosisは1968年Macaulayにより提唱された疾患である.その特徴は,臨床的にpityriasis lichenoidesの像を呈し,一般的には良性の経過をとるが,組織学的には浸潤細胞中に大型異型細胞の浸潤を認め,悪性像を思わせるとされている.しかし,その疾患概念にはなお混乱がみられる.自験例では,第1回目の組織変化はlymphomatoid papulosis類似の変化を示し,第2回目ではpity—riasis lichenoides chronicaの定型的変化であった.このことはlymphomatoid papulosisでみられる大型異型細胞はpityriasis lichenoidesでも生じうる可能性を示唆するものであり,今後,lymphomatoid papulosisの独立性について一層の検討が必要と考えられる.

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 27歳の男.顔・躯幹・四肢に表在性撒布型の汗孔角化症を持った患者において,約10年前より左殿部に巨大局面性皮疹の形成が見られた.組織学的に,巨大皮疹では局面の内部にも著明な角質肥厚と多数のcornoid lamellaがみられ,またそこの表皮の顕著な肥厚もみられた.

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 7カ月男児.生後1カ月目に躯幹右偏側に帯状ないし渦巻様の不完全脱色斑,右上下肢に線状の脱色斑に母親が気付いた.以後,脱色斑は漸次,より顕著となった.脱色斑部は基底層のメラニン顆粒が辺縁部より減少するも消失するに至らず,剥離表皮でdopa陽性メラノサイトの数では辺縁健常部と有意差はみられないが,大きさ,反応度はやや減少している.脱色斑部の電顕所見で,メラノサイト内のmelanosomeは一般に少なく,melanosome co—mplexを形成していない.Mlelanosomeを僅かしか含まないeffete melanocyteもかなりみられた.ケラチノサイト内のmelanosomeも減少している.メラノサイトと末梢神経の接近している所見がしばしばみられた.併せて本症の名称についても文献的考察を加えた.

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 典型的な皮膚所見を呈し,濃厚な家族内発症がみられたKeratoma hereditarium mutilansの25歳男子例を報告すると共に,1929年のVohwinkel1)の報告以来,我々が蒐集し得た外国の19例および本邦の2例について考察した.上記21例中,女子が15例であった.ほとんどの例では,幼児期に手掌足蹠にびまん性蜂窩状角化が発症し,4〜5年後には,指趾の絞扼および断指趾をきたしている.また,家族内発症がみられる例,および皮膚所見以外の合併症を伴った例が多く認められた.

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 46歳,女性にみられたアレルギー性肉芽腫症を報告した.本症例では,喘息様咳漱発作が先行し,次いで体重減少,下痢,筋脱力症状,肝脾腫脹を認め,皮疹として,紫斑,出血性水疱,同潰瘍を認め,一般検査にて,好中球,好酸球の増多,皮膚および筋の生検組織像にて,三角筋部に壊死血性管炎,皮膚に主として好酸球より成る巣状肉芽腫様細胞浸潤を認めた.しかしながらその反面,本症例で認められた発熱,全身症状などは,定型例に比し一般に軽度であり,組織学的に,本症の完成した血管外肉芽腫結節にみる類上皮細胞,巨細胞の浸潤も認めることができなかった.結論として,本症例はアレルギー性肉芽腫症の軽症例と考えられる.

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要約 57歳と71歳の女性の,後頭部に多発したpseudopyogenic granulomaを報告した.発疹は小豆大までの暗紅色,固い結節で,瘙痒があり,切除,電気凝固により治癒した.組織学的には,真皮上層から中層にかけての,異常血管の増殖と炎症性細胞浸潤で,リンパ濾胞様構造は認められなかった.subcutaneous angiolymphoid hyperplasia with eosinophiliaや木村氏病との関連について,若干の文献的考察を加えた.

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 盛岡市内の某県立商業高校(生徒数940名,男602名,女338名)において,black heelに関する統計的調査を行ない,以下の結果をえた.1)本症は全生徒の1割弱に認められ,性別では男に多かった.2)ほとんどの症例は運動選手であった.とくにバスケットボール部では部員の約3分の2に本症が認められた.3)好発部位は踵であるが,足蹠の他の部分や手掌にも認められた.4)単発性または多発性に生じ,片側性のことも両側性のこともあった.5)皮疹は楕円形〜帯状を呈し,大きさは長径1.0cm前後,短径0.5cm前後のものが多かった.6)自覚症はないことが多く,時に軽度の圧痛,運動時痛を訴えることもあった.7)毎年スポーツシーズンに繰り返して生ずる例もあった.

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 53歳,女性のペラグラの症例を報告した.患者は行き倒れの状態で発見され,初診時,足背,下腿,手背,前胸部を中心に紫褐色調を滞びる紅斑をみとめ,下腿においては水疱,糜爛,潰瘍を混じる.眼瞼炎,口角炎,舌肥大の他,頻回の下痢がみられ,抑うつ状態にあった.臨床検査所見においては貧血,赤沈値亢進および血清蛋白低下の他には著変なく,皮膚の病理組織検査にては角質増殖を伴なう表皮肥厚,真反上層の浮腫と基底層および真皮上層のメラニン沈着がみとめられた.Nicotinamideを含むVitamin B complexを中心とする薬剤投与と病院食の全量摂取にて経過をみたところ,紅斑および潰瘍は色素沈着およびわずかに瘢痕を残して6週後には治癒し,下痢,抑うつ状態も消失した.

ペラグラの1例 高塚 紀子
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 49歳,男.10数年続いたアルコール多飲と偏食のあと生じたPellagraの1例を報告した.また本邦における最近10年間のPellagra 42例につき発症要因,臨床症状等についての文献的考察を行った.

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 最近5年間に岐阜大学皮膚科において経験した,手術後に限局性脱毛症を生じたpostoperative alopeciaと考えられる18例について,その臨床像の特徴をまとめて報告した.9例は慢性中耳炎と関係し,根治術または鼓室形成術を行った患者で,長時間の手術時間を要した後,2日後から14日後迄の間に手術側(患耳)と反対側の側頭部に脱毛巣を生じた.他の9例は外科や産婦人科などで長時間の手術の行われた患者の後頭部に脱毛巣の形成をみた.脱毛を生ずる前にしびれ感,異和感など局所の前駆症を伴う事もあるが,大部分は突然に脱毛巣が生じている.形は三角,扇形および帯状など不定形で,円形に生ずる事は少ない.経過は大部分が1〜2カ月の内に,長いもので5カ月で治癒した.原因の一端として一定体位で長時間枕,ベッド等で圧迫を受けたため局所の阻血,循環障害をきたし,ひいては毛根の退行期への移行を早めたものと考えられた.

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 皮膚科的治療に抵抗を示す難治性円形脱毛症に対し星状神経節ブロックを試み,満足すべき結果をえたので報告する.

 症例は8歳から37歳の計10例,病悩期間は2カ月から10年で,この間種々の皮膚科的治療を試みたが効果を得られず,麻酔科Pain clinicにて星状神経節ブロックを行った.

 ブロックは毎日左右1回ずつ行ったものから週1〜2回のものとさまざまである.

 治療効果はほぼ完全に発毛した"著効6例",黒毛発生著しい"有効2例",発毛傾向はあるが軟毛が多い"やや有効2例"で無効例はなく,プロック療法の有効なことを認めた.全体として初発の脱毛からブロック開始迄の期間が短かく,集中的にブロックを行ったものに良い結果が得られた.

 星状神経節ブロックは頭部の血管収縮線維をブロックし,頭皮の毛細血管攣縮を緩解し,血行を改善することが発毛効果の主因と考えているが,なお症例を重ね検討中である.

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 71歳,男子にみられたカンジダ性毛瘡の1例を報告した.抜去した毛および生検皮膚片よりcandida albicansが検出され,抗カンジダ剤の投与により軽快した.ただし,皮膚組織において,菌要素はPAS染色で認められなかった.本例では診断確定前にステロイド剤ないし抗生剤の外用をうけ,それらの治療に抗した.また,本例では糖尿病の合併を認めた.最近,ステロイド剤,抗生剤の使用頻度が増加しており,今後本症のような異型皮膚カンジダ症の発生に注意する必要がある.

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 Mycobacterium marinum皮膚感染症のうち,稀な症例と考えられる母子罹患例および両側発生例について報告した.症例1はいきづくり職人,症例2,3は熱帯魚販売業を営む母子であり,いずれも魚類を介しての感染と考えられた.臨床像は3例とも異なり,症例1は両側手背に対側性にみられた皮膚疣状結核症様病変,症例2は左前腕の単発性肉芽腫,症例3は右手〜前腕に発生したいわゆるスポロトリコイド型の病変であった.症例1から分離した本菌の薬剤耐性検査では塩酸ミノサイクリンに強い感受性を示した.

印象記

イラン皮膚科学会に参加して 手塚 正
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 昨年メキシコの国際学会から帰国してしばらくすると,たしか11月中旬だったと記憶していますが,第5回イラン皮膚科学会の案内状が突然舞込んで来ました.メキシコの学会の懇親会で名刺を交換した中近東の教授が居たなと憶い出して名刺をみるとトルコの教授で,どうもイランの教授は記憶にありません.理由は後日判明しましてAmerican Aca—demy of Dermatologyの会員に案内状を送ったというわけです.トピックスは"中近東の皮膚病と皮膚科の治療上の問題点について"でしたので,"lamellar ichthyosisの症例に対する尿素軟膏とビタミンA酸の治療効果"という演題を出し結局参加することにしました.

 イランというとなじみのない方もあるかもしれません.現在毎日新聞連載小説「流沙」の舞台でもあります.日本とは歴史的につながりも深く,ササン朝ペルシャ時代の,たしかガラスの壺が正倉院に大切に保存されているはずです.中東第2位の産油国でアングロイラニアン石油会社を国有化した際,出光石油が一番に国有化した石油を買った因縁もあります.Seyedi教授(テヘラン大学医学部皮膚科主任教授)の話ですと,現在でもSeven Sistersに販売面を一手に握られているので,国有化したものの思うようにはいかないのだそうです.

これすぽんでんす

りぷらい 折原 俊夫
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 自験例がSLEを合併したものであるか否かについて,五十嵐氏は,合併の可能性はあるとしながらも自験例がSenear-Usher症候群だけで説明しうるのではないかという疑問を提起された.また自験例における免疫組織学的所見が,LEと同様の機序によるのではなく,天疱瘡抗体の過剰により,基底膜部に免疫グロブリン沈着をきたしたのではないかと推定された.確かに氏のそうした見解も否定はできないが,Senear-Usher症候群で抗核抗体やLE細胞が比較的多く認められることより,本症候群の免疫組織学的所見が単に天疱瘡抗体の過剰と蓄積によるものではなく,より広い免疫学的異常の上に立脚していることを示唆していると考えられる.確かに自験例では,腎炎や漿膜炎はなく,ウィルス様封入体がみつからず,また氏が指摘されたように,SLEとして定型例とはいえないが,一方SLE患者でも時期によっては必ずしもすべての所見を満たしているわけではない.それはともかくとして,今後腎生検や,ウィルス様封入体の有無の再検討などを,機会をみて行いたい.なお,脱毛および手掌などに生じた紅斑については,臨床的にNikolsky現象によるものとは考えにくく,また本例で最近軽度貧血(Hb 10〜11g/dl)が出現し,膠原病としての性格が強くなったことを追記したい.

基本情報

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臨床皮膚科
32巻10号 (1978年10月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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