眼科 59巻7号 (2017年7月)

特集 オキュラーサーフェスの新知見

序論 三村 治
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「オキュラーサーフェス」に関しては全くの門外漢の私であったが,「本態性眼瞼痙攣」という疾患を治療するようになってから,その重要性を痛感するようになった。しかし,それまで私の理解していたオキュラーサーフェスというのは言葉通り眼表面であり,その疾患といえば角結膜病変であった。しかしながら,最近では角結膜以外の組織も含めたもっと広い範囲で捉えるオキュラーサーフェスという概念が一般化しつつある。本特集はその新しい概念に基づいたオキュラーサーフェスに関する最新の知見を取り入れたものである。

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オキュラーサーフェスは,眼表面という意味であるが,かつては角膜と結膜全体を表す言葉であった。しかし,近年は,涙腺,眼瞼,マイボーム腺,涙道など眼表面に連続するすべての眼付属器を含めた広義の意味で使用されるようになってきた。

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2 つの物質表面の間には運動という物理現象のもとで「摩擦」が生まれ,それはさまざまな物理的メリットとデメリットを引き起こす。この「摩擦」に関して,眼,特に眼表面にフォーカスしてみると,瞬目という運動下で眼球表面(角膜および眼球結膜)と眼瞼結膜およびthe lid-wiper 1)との間で摩擦が生じる。瞬目に伴う眼表面摩擦の役割のひとつとして,角膜上の涙液層の交換を図って常にクリアな視界を保つことが挙げられる。また,眼表面摩擦は眼表面上皮細胞の正常な脱落を促しているが,病的な状態では,過剰な摩擦によって上皮細胞の脱落が過度に生じ,角結膜上皮障害に至る。この眼表面摩擦が上輪部で亢進すれば上輪部角結膜炎〔superior limbic keratoconjunctivitis(SLK)〕2)を発症し,lid-wiper で亢進すればlid-wiper epitheliopathy(LWE)1)に至る。本稿では,瞬目に伴って発生する眼表面摩擦亢進に関連した疾患の病態と治療について解説する。

3.マイボーム腺炎 鈴木 智
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近年, マイボーム腺機能不全(meibomiangland dysfunction,以下MGD)がさまざまな症状や眼表面の異常と関連することが注目され,その診断・治療の重要性が議論されるようになってきた。特に,日本人に多い閉塞性MGD は,蒸発亢進型ドライアイの最も多い原因として認識されている1)。

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ドライアイはさまざまな原因・危険因子によって生じるが,その発症メカニズム,特にドライアイの発症に炎症が関与するかについての考え方は国によって大きく異なる。日本では涙液の安定性の低下,水濡れ性の低下からドライアイが引き起こされると考えられているのに対し,欧米では2007 年のDry Eye Workshop(DEWS)のレポートに定義されたように涙液浸透圧の上昇に伴う「炎症」がドライアイの引き金と考えられている1)。言い換えるとドライアイにおける炎症は,日本では悪循環の結果として炎症が生じると考えられるのに対し,欧米では原因と考えられている。この概念の差異はドライアイ診療における診断法や治療薬にも影響する。ドライアイ診療においては,日本では涙液層の安定性,涙液の動き,角結膜の上皮障害などを重視するのに対し,米国では涙液の浸透圧も重要視される。また治療に用いる点眼薬をみても,日本では涙液の安定性の改善を主目的としたヒアルロン酸ナトリウム,ジクアホソルナトリウム,レバミピドの3 種が処方できるが,米国ではシクロスポリンと接着分子のlymphocytefunction-associated antigen 1(LFA-1)阻害薬の2 種である。シクロスポリンやLFA-1阻害薬は,T 細胞の抑制を主作用とする免疫抑制剤であるが,ドライアイが炎症によって生じると考えられている証拠といえる。ただ米国ではドラッグストアで購入できる市販薬,OTC(OverThe Counter)が豊富で,人工涙液やヒアルロン酸の点眼薬なども眼科を受診せずにOTC として購入できる。欧州に至っては,ドライアイの処方薬は無い国が多い。このような考え方の違いは,医学・科学的な理由に加えて保険制度などの医療制度の違いも含めたさまざまな要因が関係すると考えられるが,これほどまでに治療薬が国によって異なる疾患も珍しいのではないだろうか。ドライアイは種々の原因で生じる疾患群であり,その原因によって炎症の関わり方も異なると考えられる。BUT 短縮型ドライアイ,涙液減少型ドライアイ,シェーグレン(Sjögren)症候群,移植片対宿主病などを考えても明らかなように,疾患により炎症の関与が少ないと思われるものや,炎症がドライアイの結果や原因であるもの,眼表面炎症疾患にドライアイが合併しているものなど,ドライアイにおける炎症の関わり方を一元的に述べることは難しいと考えられる。

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近年,ドライアイでみられる角結膜上皮障害に対して,涙液減少やBUT(涙液層破壊時間)短縮以外にさまざまな因子の関与が注目されている。2016 年にドライアイ診断基準が10 年ぶりに改定1)されたが,定義の中から「涙液減少」という文言が除外され,「さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患」であると定められたことがそれを物語っている。

綜説

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一般に老視の矯正には眼鏡が使用されるが,コンタクトレンズ(CL)を用いても対処できる。CLにはハードコンタクトレンズ(HCL)とソフトコンタクトレンズ(SCL)があるが,1 日使い捨てタイプと2 週間交換タイプのSCL が主流になり,近視や遠視と老視を一緒に矯正する遠近両用SCL を処方する機会が増えてきた。本稿では遠近両用CL の種類を述べた後に,遠近両用SCLの特徴と処方を概説する。

小児眼科疾患

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若年網膜分離症は,先天網膜分離,あるいはX 染色体連鎖性若年網膜分離症(X-linked retinoschisis:XLRS)ともよばれ,小児期に弱視として発見されることが多いが,ときに診断が困難なことがある。本疾患について,臨床的所見,症状と経過,検査所見,原因となる遺伝子,現在行われている治療研究を含めて解説する。

機器・薬剤紹介

18.Mチャート 岩西 宏樹
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黄斑疾患では,‘ゆがみ’の自覚を訴えるケースを日常臨床においてしばしば経験する。‘ゆがみ’に対する自覚症状は変視症または歪視症とも呼ばれ,視力低下や視野障害と同様に日常生活における見え方の質を低下させ得る。日常臨床に広く用いられているアムスラーチャートは変視の部位と範囲を簡便に,かつ定性的に評価することが可能であるが,定量的評価を目的としていない。変視症の定量評価チャート(M-CHARTS Ⓡ:以下,Mチャート)は,変視を定量化する検査方法で,1999 年にわが国の松本らが開発した1)。M チャートは固視点近傍の微細な‘ゆがみ’も検出可能であり,黄斑疾患における変視の検出,定量に優れた検査方法である。

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糖尿病黄斑浮腫(DME)に対する治療法として抗血管内皮細胞増殖因子(抗VEGF)薬であるranibizumab1)〜3)やaflibercept 4)5)の硝子体注射の有効性が報告されているが,繰り返しての治療が必要となることが多く臨床上の問題点もある6)。

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2013 年にSarraf ら1)がparacentral acute middlemaculopathy(傍中心窩急性中間層黄斑症)の報告をした。これは光干渉断層計(以下,OCT)での内顆粒層の高反射を特徴とし,網膜深層毛細血管網の灌流異常と考えられている。

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基本情報

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眼科
59巻7号 (2017年7月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0016-4488 金原出版

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