Ⅶ.網膜硝子体
12.駆逐性出血
井上 真
1
1杏林アイセンター
キーワード:
駆逐性出血
,
上脈絡膜腔出血
Keyword:
駆逐性出血
,
上脈絡膜腔出血
pp.1283-1286
発行日 2020年10月30日
Published Date 2020/10/30
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001894
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駆逐性出血は術中や術直後に生じる上脈絡膜腔の出血である。動脈圧の亢進や急激な眼圧低下,突然の疼痛を伴い,硝子体圧の上昇に続いて網膜が急激に盛り上がってくる。その後に虹彩や水晶体,網膜などの眼球内の組織が手術創から脱出してくる。駆逐性という名のように眼内組織が一気に創口から脱出してくることもあるといわれている。駆逐性出血は眼内手術のなかでも最も重篤な合併症であり,眼の生命線の領域に多量の出血を生じるため失明や眼球癆に直結する。全内眼手術の0.19%,網膜硝子体手術の0.41%に発症すると報告されている1)。近年の白内障手術などの小切開化により発生頻度は低下していると考えられるが,一度起こってしまうと重篤な合併症となることに変わりはない。ハイリスク症例は予想できるが発生頻度が低いため,手術中に駆逐性出血が起こっていると気づかずに手術を続行した場合には失明の可能性が高くなる。早期に診断を行い一刻も早く創口を縫合し,出血の増悪を防いで眼球内の組織を温存できれば再手術によって視機能が保たれる可能性が増す。
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