特集 アディクション支援のフロントライン
女性のためのリカバリー・プログラムSeRA(Seeking to Recover from Addiction)
近藤 あゆみ
1
1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部
pp.59-64
発行日 2025年6月5日
Published Date 2025/6/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt51070059
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Ⅰ なぜSeRAが必要だったのか
1.二十数年前に出会った女性たちのこと
SeRAについて述べる機会をいただいた時は,必ず二十数年前に出会った女性たちの顔を思い出す。大学でメンタルヘルスのことを学ぶうちにいつしか依存症の世界に惹かれ,もっと学びたいと病院や地域の支援機関で任意実習をさせてもらっていた頃,定期的に通っていた依存症デイケアがあった。利用者の多くは男性だったが,そのなかに数は少ないながらも女性たちの姿もあった。
女性たちは,一見すると男性たちより波風立てずうまくやっているようにみえたが,少し近づいて話を聞いてみたりすると,しょっちゅう人間関係上のトラブルやとらわれに苦しんでいるようだった。また,急にデイケアに来なくなったり,衝動的な行動,多くは自傷など自己破壊的な行動をとったりすることもあった。不調の原因として薬物使用が考えられるときもあったが,むしろ薬物以外の何か大きな問題が背後に隠れている気配がひしひしと感じられた。しかし,当時まだ新米だった筆者は,理解できない女性たちにどう触れたらよいのかわからず,せめて傷つけないようにこわごわと距離を保って接することしかできなかった。

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