連載 読みきり短編小説 手をつないで歩こう・4
ADDICTION
渡辺 真琴
pp.592-597
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100398
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僕が彼女に出逢ったのは,梅雨が明け,いよいよ本格的な夏が始まろうとしている時分だった。その年は,ひどく暑い夏の始まりで,電気屋ではエアコンが飛ぶように売れていた。
そのころ僕は,まだ駆け出しの編集者だった。僕の働く会社は下町の雑居ビルの2階にあった。それは,お世辞にも立派とは言えない古い建物だったけど,西日を受けてオレンジ色に染まるコンクリート打ちっぱなしの外壁を,僕はかなり気に入っていた。
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