特集 トラウマインフォームドケア
女性のためのリカバリー・プログラムSeRA (Seeking to Recover from Addiction)―アディクションとトラウマとの深い関係を紐解く
近藤 あゆみ
1
1国立精神・神経医療研究センター
pp.454-458
発行日 2025年7月10日
Published Date 2025/7/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp25040449
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I 薬物問題をもつ女性たちのトラウマ
薬物問題を抱えた人々の多くは,児童虐待,パートナーからの暴力などによるトラウマを経験しており,その割合は男性よりも女性の方が高い。欧米の過去の研究によると,物質使用障害をもつ女性の75%以上が過去に身体的虐待などの被害経験を有しており,30~55%に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の併存が認められる(Najavits et al., 1997)。日本でも,筆者らが法務省矯正局成人矯正課の協力を得て行なった調査によると,全国の女子刑事施設に収監された覚醒剤取締法違反者の72.5%が過去にトラウマティックな体験があると回答している。また,The Posttraumatic Diagnostic Scale for DSM-5(PDS-5)という尺度を用いてトラウマ体験の有無やPTSD重症度を評価した結果をみると,そのうちの31.6%がPTSD診断の可能性を識別するためのカットオフポイント(28点)を超えていた(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター,2023,pp.44-47)。世界的にみても日本においても,薬物問題を抱える女性たちにとってトラウマはとても身近なものであり,そのほとんどが過去に何らかの被害や傷つきを経験していると言っても過言ではない。

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