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食品を取り扱う施設の感染症管理を行うためにはHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)を導入することが必須である.HACCPは原材料の受入から最終製品までの工程ごとに,生物学的危害(ヒトが発症・感染する病原体の汚染),物理学的危害(原材料中の異物,施設片や器具の破損片の混入),化学的危害(農薬などの残留や殺そ剤,殺虫剤,消毒薬や作業工程上の潤滑油などの汚染)を予測,または過去の事例をもとに,危害の防止につながる特に重要な工程を連続的・継続的に監視し,記録することにより,製品の安全性を確保する衛生管理手法である.HACCP導入施設では衛生的で均一な製品が生産される1, 2).よって,最終製品の抜き取り検査結果が製造されたすべての製品に反映される.HACCP導入施設で製造された食品の基本概念を図1に示す.HACCPを導入する前の例Ⅰでは9つが最高品質○,1つが不良品質×であるとする.偶然抽出検査した2つの結果(最高品質○と不良品質×が1つずつ)が反映されてしまうため,残りの8つは最高品質○であるにもかかわらず廃棄となる.例Ⅱでは検査用に偶然抽出した2つが最高品質○であれば,検査結果は合格となり,不良品質×や中程度品質△が含まれた食品が流通してしまう.よって,例Ⅰおよび例Ⅱでは偶然抽出された製品検査結果のみで判断されてしまう.HACCPが導入されると,均一な製品が製造される.HACCP導入施設を例Ⅲと例Ⅳに示す.例Ⅲならびに例Ⅳでは,製品検査結果が最終製品管理に反映されている.そのためには検査精度も重要となり,製品検査の業務管理基準(Good Laboratory Practice:GLP)を導入した食品検査室が必須となる.糞便系大腸菌,大腸菌群,腸内細菌科菌群,一般生菌数などの衛生指標細菌の簡単な検査であっても,その精度は確実なものでなければならない.
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