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サルモネラ属はEnterobacteriaceaeに含まれる2菌種からなる.Salmonella entericaとS. bongoriである.うちS. entericaはさらに6亜種(enterica,salamae,arizonae,diarizonae,houtenaeおよびindica)に分類される.ヒトに病原性があるのは,主として亜種enerticaである.これは,他の亜種と異なり,亜種enerticaが恒温動物に適応したためと考えられる1,2).2004年に新たに報告されたS. subterranea3)はサルモネラの菌種としては認められていない.全サルモネラは2,579の血清型に分類される(2007年時点4)).前述の血清型のうち,主として亜種enerticaに属する血清型は,その宿主域からhost restricted,host adapted,およびnon-host adapted(broadhost-range)なサルモネラ血清型の3つに分類される2,5,6).Host restrictedなサルモネラ血清型は,一種類の動物種しか宿主としない.栄養要求性が厳しく,かつ他のサルモネラと異なる生化学性状を示す5,7).ヒトに感染するものは全身感染を惹起することが多く,血清型TyphiとParatyphi A,Paratyphi Bの一部,Paratyphi Cは腸チフス,パラチフスを起こすことがある(チフス性サルモネラ)8).Host adaptedなサルモネラは,ごく限られた動物種(2,3種)を宿主域とする.ヒトに感染するものは,全身感染や局部の膿瘍などを惹起することがある.Non-host adaptedなサルモネラ血清型は,多くの動物種に感染し,ヒトには食中毒を起こすことがある(非チフス性サルモネラの大部分を占める)2).ただし,Non-host adaptedなサルモネラであってもアフリカなどでは侵襲性の感染症を度々惹起する9).非チフス性サルモネラの宿主域としては,哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類,魚類,昆虫であり,植物中でも増殖可能で,環境水中でも生き残る能力がある6).そのため,非チフス性サルモネラによる食中毒の原因食品は非常に多岐にわたる.
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