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特集 カルシウム動態と細胞機能
自己寛容(セルフトレランス)の形成とカルシウムオシレーション
Thymocyte Neative Selection and Calcium Oscillation
中山 俊憲
1
,
鈴木 和男
2
Toshinori Nakayama
1
,
Kazuo Suzuki
2
1東京理科大学生命科学研究所
2国立予防衛生研究所
pp.128-134
発行日 1996年4月15日
Published Date 1996/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901072
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免疫系は「自己」と「非自己」を見分けることができるといわれる。このことは,最近よくマスコミなどで議論にのぼっている,「輸血」や「臓器移植」の問題と深い関係がある。通常,他人の臓器や皮膚が移植できないのは,免疫細胞のなかでTリンパ球(T細胞)が輸血された血球や移植片を「非自己」とみなし,体外へ排除しようとする強い拒絶反応が起こるからである。では,T細胞はどのようにして「自己」と「非自己」を見分けているのだろうか。
健康な人の体内にいるT細胞は他人の組織(移植片)には非常に強い反応を示すにもかかわらず,同じヒトでありながら,自分の組織と反応して拒絶反応を起こすことはない。この状態は免疫学的自己寛容(セルフトレランス)という。とすると,ヒトの各組織にはそれぞれの人で違った「自己」がプリントされていなければならないはずである。現在では,体内のほとんどすべての細胞表面にプリントされている自己の原型は,主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex;MHC)抗原と呼ばれるポリペプチドであることがわかっている。ヒトではHLAがそれにあたる。免疫系はこのMHC抗原を認識して「自己」か「非自己」かを識別する。
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