特集 HACCPと食中毒対策の最前線
3.カンピロバクター総論
藤本 秀士
1
1九州大学大学院医学研究院保健学部門生体情報学講座
pp.20-27
発行日 2018年4月10日
Published Date 2018/4/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0108.02.01_0020-0027
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カンピロバクター(Campylobacter)は,グラム陰性のらせん状桿菌で,大気中では発育せず,菌種の大半は酸素(O₂)濃度3~15%で発育する微好気性菌である.古くはビブリオ(Vibrio)属に分類されたが,Campylobacter属として1963年に独立し,現在,アルコバクター(Arcobacter)属などとともにカンピロバクター科(Campylobacteraceae)に分類されている.本菌は,ヒトや動物を宿主として自然界に広く分布する.主に消化管や生殖器などに生息し,保菌動物の排泄物による河川水などの汚染もみられる.本属の一部の菌種は,保菌動物から直接,または汚染された飲食物を介してヒトに感染し,腸炎などの消化管疾患をはじめ,菌血症・敗血症や髄膜炎などの人獣共通感染症の原因となっている.なかでも,最も頻度が高いのが感染性腸炎であり,散発性下痢症や集団食中毒として発生する.本菌とヒトの下痢症との関連が証明されたのは1970年代に入ってからで,その後,検査法の進歩と普及とともに世界中に分布していることがわかった.カンピロバクター腸炎は,発展途上国のみならず先進国においても現在最も多い感染性腸炎のひとつであり,近年ではキノロン耐性菌株が世界的に増加するなど,公衆衛生上の大きな問題となっている.本稿では,カンピロバクター総論として,カンピロバクター腸炎の臨床と発生状況,発生要因となる主要な原因菌種の細菌学的特徴や薬剤耐性の現状などについて述べる.
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