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食品の衛生管理へのHACCP(ハサップ,Hazard Analysis and Critical Control Point)導入については,1993年に食品の国際規格を定めるコーデックス委員会(国際連合食糧農業機関[FAO]および世界保健機関[WHO])により設置された国際的な政府間組織)において,ガイドラインが示されてから20年以上が経過している.HACCPによる衛生管理とは,食品等事業者自らが食中毒菌などの病原微生物の汚染や異物混入などの危害要因(ハザード)を把握したうえで,それらの危害要因を除去または低減させるため,原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程のなかでも,特に重要な工程を設定・管理し,製品の安全性を確保しようとする手法である.先進国を中心にその実施の義務化が進められてきた.HACCPによる食品の衛生管理は,わが国から輸出する食品にも要件とされるなど,今や国際標準となっている.一方,厚生労働省の“食品衛生管理の国際標準化に関する検討会”により議論が行われ,2016年12月には,これまで行ってきた議論やパブリックコメントの内容を踏まえた最終とりまとめが公開された.国際整合性の観点から,わが国においても,一部の食品製造事業者や輸出用食品の製造事業者だけがHACCPに取り組むのではなく,フードチェーン全体でHACCPによる衛生管理に取り組む必要があること,またその際,食品ごとの特性や,事業者の状況などを踏まえつつ,中小零細の食品取扱い施設においても実現可能な方法で着実に取組みを進めていくことが重要であるといった今後の方向性が示された1).そこで,このような方向性に至った背景や経緯についてまとめてみる.
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