スポット
筋質指標としての位相角
-高齢者における身体機能との関連からみた有用性
畑中 翔
1
Sho Hatanaka
1
1東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム
pp.967-969
発行日 2024年6月1日
Published Date 2024/6/1
DOI https://doi.org/10.32118/cn144070967
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はじめに
高齢期の身体機能の低下は転倒などのリスクを高める.したがって,身体機能の日常的なモニタリングが健康寿命の延伸には重要である.しかし,身体機能の評価は測定値の客観性・再現性が低いうえに,測定にあたる人的リソースを要する点が課題である.
身体機能を支える骨格筋の形態的側面に着目すると,これまでは主に「量」(筋量)が評価されてきたが,近年はそれに加えて「質」(筋質)が注目されている.筋質の統一された定義はないが,加齢による骨格筋の機能低下をとらえる多義的な概念として形成されつつある.
加齢にともなう筋の機能低下が必ずしも筋量の低下で説明できないことは,2000年代初期の研究で明らかとなった1).その後の研究で,筋間脂肪などの非収縮性組織の蓄積2),除脂肪組織中の筋細胞密度の低下(細胞内・外の水分比の低下)3)などが筋の機能低下につながることがわかってきた(図1).
位相角は,生体電気インピーダンス分析(bioelectrical impedance analysis:BIA)法で測定される筋質の指標である.BIA法は広く用いられている形態計測法であり,一般に流通している体組成計はBIA法で筋量や体脂肪率を算出している.測定は簡単,迅速,非侵襲的であり,測定値の再現性が高く,1人で測定できるため人的リソースを最小限に抑えられる.
本稿では位相角の定義とその解釈を概説し,身体機能との関連について位相角と筋量を比較検討した研究を紹介する.
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