銀海餘滴
位相差顕微鏡について(2)
pp.453
発行日 1954年3月15日
Published Date 1954/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201826
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実際にはどんなふうになつているかというと,集光レンズの前に輪の形をした絞りがあり,一方,対物レンズの中(対物レンズの後の焦点のところ)に,位相板と呼ばれるものが置いてあり,輪状の絞りの像が丁度この位相板の真中にある,極く薄いリング状の膜に重なるようにできています。これで標本をのぞくと,進んでいる直接光を遲らせるようになつているわけです。くわしくいうと,回折光を遲らせる場合もあり,又光の強さも適当に加減するようになつていますが,それはこゝでは省略しましよう。その他の部分は今までの顕微鏡と少しも変つていません。
大変頭の重くなるような話をのべましたが,結局,特別な絞りと位相板が普通の顕微鏡に附いたゞけで,大したもりではないじやないか?と思う方もいるでしよう。それは大きな誤りです,この顕微鏡ができて以来,生命というものを非常に身近に感ずるようになつたことは何といつても偉大な業績といわなければなりません。なぜならば,初めにものべたように,今までの私達の研究は,大部分の標本はすでに固定,染色した,死んだものについてしかできなかつたわけで,死物から生きているときの状態や,変化を頭の中でつなぎ合せて判断していたわけです。
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