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特集 神経回路の機能発達と障害――基礎研究からヒト病態へ
シナプス除去の分子機構と発達障害
The molecular mechanisms of synapse elimination and developmental disorders
圓岡 真宏
1
,
鈴木 淳
1
Masahiro MARUOKA
1
,
Jun SUZUKI
1
1京都大学高等研究院 物質–細胞統合システム拠点
キーワード:
シナプス刈り込み
,
スクランブラーゼ
,
発達障害
Keyword:
シナプス刈り込み
,
スクランブラーゼ
,
発達障害
pp.1196-1200
発行日 2025年6月28日
Published Date 2025/6/28
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293131196
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脳の発達初期段階では過剰な数のシナプスが形成されるが,これらのシナプスは環境要因や個体の経験に応じて選別され,必要なシナプスは強化・維持される一方で,不要なシナプスは除去される.この選択的なシナプスの除去過程は “シナプス刈り込み(synaptic pruning)” とよばれ,機能的な神経回路の形成に重要である.不要なシナプスの除去機構については不明な点が多く残されているが,近年,不要なシナプスの先端ではホスファチジルセリン(PS)の露出が観察されており,貪食細胞が露出したPSを認識して除去すると考えられはじめている.しかし,PSの露出機構やその過程で役割を果たすスクランブラーゼの分子的実体については十分解明されていない.本稿では,シナプス刈り込みのメカニズムとその生後発達過程について概説し,近年の研究により明らかになった貪食の分子機構や制御機構について紹介する.さらに,シナプス刈り込みの破綻が神経発達障害や精神疾患の発症にどのように関与するかについても議論し,治療介入の展望について述べる.

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