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第5土曜特集 細胞死のすべて――そのメカニズムと,生命現象・疾患との関わり
死細胞の行方
脂質スクランブルによる “eat me” シグナルの提示
Presentation of “eat me” signals by lipid scrambling
圓岡 真宏
1
,
鈴木 淳
1
Masahiro MARUOKA
1
,
Jun SUZUKI
1
1京都大学高等研究院物質-細胞統合システム拠点(iCeMS),同大学院生命科学研究科細胞動態生化学,同オンサイトラボアカデミアシニカ-生物医学科学研究所
キーワード:
フリッパーゼ
,
スクランブラーゼ
,
“eat me” シグナル
,
脂質スクランブル
,
Xkrファミリー
Keyword:
フリッパーゼ
,
スクランブラーゼ
,
“eat me” シグナル
,
脂質スクランブル
,
Xkrファミリー
pp.374-379
発行日 2022年10月29日
Published Date 2022/10/29
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28305374
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細胞は細胞内に物質の非対称的分布を構築し,それを動的に変化させることで環境変化に柔軟に対応している.それは細胞膜においても例外ではない.細胞膜の脂質二重層を構成するリン脂質は,細胞膜の外側と内側において非対称的に分布している.この働きにはフリッパーゼによるATPを用いた脂質の移層が重要である.一方,この非対称性は脂質を双方向に区別なく輸送するATP非依存的なスクランブラーゼの働きによって変化する.この働きにより細胞膜の内側に保持されていたホスファチジルセリン(PS)が速やかに細胞表面に露出し,血中を流れる血液凝固因子が活性化するための反応場や,死んだ細胞がマクロファージなどの貪食細胞に食べられるための “eat me” シグナルとして機能する.特に,死んだ細胞が除去されない場合,細胞内容物が漏出して炎症を惹起するため,脂質の速やかな移層(脂質スクランブル)は不要な細胞が速やかに除去されるために必須の生理作用であるといえる.本稿では,脂質スクランブルの分子機構について論じたい.
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