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家族性自律神経失調症とスプライシング変異
家族性自律神経失調症(familial dysautonomia:FD)は遺伝性感覚・自律神経系ニューロパチーⅢ型(HSAN Ⅲ型)としても知られ,自律神経・感覚神経の発達異常と進行性の変性・衰退により流涙の欠損,口腔運動失調,消化器の運動障害,進行性の筋萎縮等,種々の感覚障害・自律神経機能障害が生じる常染色体劣性遺伝病である.1949年にRiley,Dayらにより報告され1),2001年にIKBKAP(inhibitor of kappa light polypeptide gene enhancer in B-cells,kinase complex-associated protein)遺伝子のスプライシング変異であるIVS20+6T>CがFDの原因変異として同定された2,3).同変異は99.5%以上のFD症例で原因変異となっており,欧米の主要なユダヤ人種であるアシュケナージ系人種ではヘテロ保因者が約30人に1人と高頻度である.IVS20+6T>C変異が存在することで,IKBKAP遺伝子第20番エクソンのスプライシングドナー部位とU1snRNP間のRNA-RNA塩基対合による親和性が低下し,その結果同エクソンのスプライソソームへの取り込みが阻害される(図1-A).それにより第20番エクソンのスキッピングが生じ,翻訳の読み枠が変化することで未成熟な終止コドンが生じ正常なタンパク質の発現が阻害される.IKBKAP遺伝子はtRNA修飾と翻訳制御に関わるelongator acetyltransferase complex subunit 1(ELP1)をコードしており,FD患者細胞ではtRNA修飾の程度に正常細胞と比較して大幅な低下がみられ4),そのような翻訳制御機構の破綻が疾患の主原因とされる.このように原因変異と発症機構の理解が近年進む一方,FDに対する有効な治療法はいまだ確立していない.
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