Japanese
English
特集 RNA
脳・神経系の選択的スプライシングと神経特異的スプライシング制御タンパク質
Alternative splicing and splicing regulators in the central and the peripheral nervous systems
伏見 和郎
1
,
塚原 俊文
1
Kazuo Fushimi
1
,
Toshifumi Tsukahara
1
1国立精神神経センター神経研究所疾病研究第1部
pp.96-102
発行日 2002年4月15日
Published Date 2002/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902533
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ヒトの遺伝子の三分の一から二分の一がスプライシングアイソフォームを持つと推察されている1)。スプライシングアイソフォームの数は遺伝子によって異なるが,ダウン症候群との関連が指摘されている接着分子,DSCAMのショウジョウバエホモログは約38,000個のスプライシングアイソフォームを持つ可能性があり2),それぞれのアイソフォームが複雑な神経回路の形成に寄与していると推察されている。このようなゲノム上のエクソンの構成に対応しているスプライシングの制御は複雑であろうと予測できるが,現時点で説明できるほどの知識に至っていない。
また,スプライシングアイソフォームが作られることがいかに重要かということに関しても,長い間の研究で徐々に知見が蓄積している。たとえば,trkBはニューロトロピン受容体ファミリーに属する受容体チロシンキナーゼであるが,チロシンキナーゼドメインを含まないスプライシングアイソフォームを持ち,チロシンキナーゼドメインを持つtrkBに対して,ドミナントネガティブに働く3)。また,スプライシングによる制御によって,多くの転写制御因子のDNA結合活性や,転写活性あるいは抑制活性が変化する4)。さらにスプライシングの異常が原因になる遺伝性疾患も見つかっており,スプライシングの制御が重要でいかに巧妙に行われているかという点で理解が深まってきているように感じ取られる。
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