特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008
2.分子生物・遺伝学・遺伝子工学
ヒト免疫不全ウイルス1型Vprによるスプライシング制御
間 陽子
1
Yoko Aida
1
1理化学研究所基幹研究所分子ウイルス学
pp.380-381
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100523
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後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)は,レトロウイルスに共通に存在する構造遺伝子であるgag,polおよびenv以外に,調節遺伝子であるtatとrev,さらにアクセサリー遺伝子であるnef,vpu,vpr,vifを有するという特徴がある。中でもvpr遺伝子産物は核移行,細胞周期のG2期停止,細胞の分化,アポトーシス,転写活性化などの多様な機能を発揮することによって,ウイルス複製とAIDS病態を制御していることから,AIDS発症の鍵として注目されている1)。これらのVprの様々な機能の発現は,Vprと相互作用する細胞内因子が多数存在することに起因すると考えられている。そこで,Vprの未知の機能を解明するために,われわれはYeast two hybrid法を用いて,新規Vpr結合因子として思いがけずスプライシング因子spliceosome-associated protein 145(SAP145)を同定したことから,Vprの新規の機能としてのスプライシングへの関与を見出すことに成功した2,3)。
本稿では,細胞由来およびHIV-1プロウイルス由来のpre-mRNAのスプライシングを制御するというVprの新しい機能の発見に至る過程と,そのスプライシング制御機構について紹介したい。
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