増大特集 細胞シグナル操作法
Ⅱ.機能からみたシグナル操作法
1.遺伝子・ゲノム
スプライシング
大江 賢治
1
,
飯田 慶
2
,
萩原 正敏
3
Ohe Kenji
1
,
Iida Kei
2
,
Hagiwara Masatoshi
3
1京都大学大学院学際融合教育研究推進センター健康長寿社会の総合医療開発ユニット(LIMS)
2京都大学大学院医学研究科医学研究支援センター
3京都大学大学院医学研究科形態形成機構学
キーワード:
化合物
,
ハイスループットシークエンサー
,
スプライシング操作ルール
Keyword:
化合物
,
ハイスループットシークエンサー
,
スプライシング操作ルール
pp.470-471
発行日 2015年10月15日
Published Date 2015/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200312
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スプライシングでは,転写されたRNAにU snRNP(ウリジンに富む核内分子RNAの蛋白質複合体)が順次結合することにより巨大な複合体(スプライソソーム)が形成され,イントロンが除去されエクソン同士が連結される基本的なスプライシング過程が行われる。このスプライソソームを制御するRNA結合蛋白質因子として,SR(セリン・アルギニンに富むドメインを持つ)蛋白質やhnRNP(ヘテロ核リボヌクレオチド蛋白質)などがあり,ほかに様々な蛋白質が次々に明らかになっている。また,スプライシングを操作して変化させるスプライシング操作化合物も,スクリーニング法の進化と共に効果の強いものが見つかってきている。
一方,化合物で特定のエクソンのスプライシングだけを特異的に操作することの難易度は高い。スプライシング反応は様々な制御配列によって複雑な制御を受けており,また,制御蛋白質が細胞や組織によって異なるためである。この難題を打開するために,ハイスループットシークエンサーなどを用いて様々な種類の細胞において化合物が作用するエクソンを網羅的に同定し,化合物ごとのスプライシング操作ルールを解明する研究が必要不可欠である。化合物によるスプライシング操作ルールの解明は,細胞におけるスプライシング制御の解明に寄与するだけでなく,スプライシング異常に起因する疾患の治療薬の開発へとつなげることができる。
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