話題
トランス・スプライシング—二本のmRNA前駆体からmRNAができる
高橋 豊三
1
,
重松 貴
1
,
満田 年宏
1
,
奥田 研爾
1
Toyozoh Takahashi
1
,
Takashi Shigematsu
1
,
Toshihiro Mitsuda
1
,
Kenji Okuda
1
1横浜市立大学医学部細菌学教室
pp.609-611
発行日 1986年12月15日
Published Date 1986/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904950
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真核細胞では,タンパク質をコードしている遺伝子のほとんどが介在配列,すなわちイントロンを有している。これはいくつかの原核細胞においても見出されている。このイントロンは成熟mRNA(mRNA)が形成される過程において取り除かれる。すなわち,イントロンが取り除かれ,コード領域であるエキソンが正しい秩序で互いに正確にスプライスされるのである。このスプライシングの機構に関しては,二年前にin vitro splicingsystem1)が開発されて以来,長足の進歩を遂げたにもかかわらず,未だに不明なままである。しかし,明白と思われていたことが一つある。それは1本の成熟mRNAは,スプライシングの過程で一つの前駆体分子(pre-mRNA)から産生されるということである。いい換えれば,これは分子内反応だと信じられていたのである。しかし,何か驚くべきことのように思われるかもしれないが,適切な条件下でスプライシング反応を行うと,お互いに別個の二つのmRNA前駆体分子から容易に,お互いのエキソンを繋ぎ合わせることができるのである2)。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のPhilip Sharpとその一門のRichard Padgett,Maria Konarskaは人工的にメッセンジャーRNAの前駆体を二つ作った。
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