Japanese
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特集 ここまでわかった細胞老化と腫瘍
細胞老化と腫瘍化
-――防御機構の破綻
Senescence and tumorigenesis
――Senescence is a double-edged sword
城村 由和
1
,
中西 真
1
Yoshikazu JOHMURA
1
,
Makoto NAKANISHI
1
1東京大学医科学研究所癌・細胞増殖部門癌防御シグナル分野
キーワード:
老化細胞
,
発がん
,
ゲノムストレス
Keyword:
老化細胞
,
発がん
,
ゲノムストレス
pp.145-148
発行日 2021年4月10日
Published Date 2021/4/10
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27702145
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今から60年ほど前に,ヒトの正常細胞が通常の培養条件では50~60回程度分裂(分裂寿命)した後に,恒久的に増殖を停止することが見出された.この増殖を停止した細胞は老化細胞とよばれ,代謝的に活性化されており,長期間にわたり生存することが可能である.近年になり,分裂寿命以外にもDNA損傷や酸化的ストレス,さらにはがん遺伝子の活性化などによっても細胞老化が誘導されることがわかった.このように,老化細胞はさまざまなゲノムストレスにより誘導され,恒久的増殖停止を特徴とするため,発がん防御機構の一端として機能することが示唆されている.実際に,個体内において老化細胞はがん組織にはほとんど存在せず,前がん病変や良性腫瘍において高頻度で同定される.一方,老化細胞の特徴としてさまざまな炎症性サイトカインや増殖因子を分泌すること知られている.これにより周囲の組織に微小炎症を誘導することで細胞非自律的に発がんを促進する可能性も提唱された.これらのことから,細胞老化は発がんに対して抑制的にも促進的にも機能することが考えられる.
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