Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
現在,日本は65歳以上の人口の割合が全人口の21%を占める超高齢社会にある.日本での超高齢社会の一番の問題点は,その年に生まれた0歳児の平均余命である平均寿命と自立した生活を送れる期間,すなわち健康寿命との大きな乖離である.しかし,健康寿命を平均寿命に近づけるのは容易ではない.生物の老化は,加齢という時間軸に沿って進む一方向性の避けられない現象である.そして,老化の速度は個人個人でバラバラである.そのため,同年齢のヒトでも老化の進行程度は異なる.一方,老化制御とは人生のある時期からそれまでとは異なる手段を取り入れることにより加齢による生理機能の低下を遅らせることである.デンマークでの双子の調査研究から,ヒトの寿命に対する遺伝子の寄与率はおよそ25%と推測される.そして,残りのおよそ75%は住環境や食生活,運動習慣など後天的な要因が大きく関与する.近年,エイジングサイエンスにより老齢動物の組織には機能破綻した老化細胞の存在が明らかになった.また,機能破綻した老化細胞はさまざまな生理活性物質を分泌することもわかってきた.この現象は細胞老化関連分泌形質(SASP)とよばれ,他の細胞の機能破綻をも招く可能性が指摘されている.現在,老齢動物の組織から老化細胞の除去を目的に老化細胞を選択的に殺す薬剤,senolytic薬の研究開発が世界中で精力的に行われている.しかし,現在報告されている薬剤は老化細胞に特異的に作用するわけではなく,また副作用の報告もあることからヒトへの適用は慎重に検討する必要がある.これからのエイジングサイエンスの発展により老化細胞の本質が明らかになれば,本質的な老化機構の解明につながる.そして,老化機構の解明は超高齢社会における健康寿命の延伸へとつながる.
Copyright © 2021 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.