案件から学ぶ医療事故の対策と問題点
脂肪腫摘出時の不備による出血性ショックを生じた例
向井 秀樹
1
1東邦大学医学部
pp.270-271
発行日 2021年3月1日
Published Date 2021/3/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000002443
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
・20歳代女性.数カ月前から臍部の上方の軟らかいしこりに気づく.自覚症状はない.大豆大で下床と可動性のある皮下腫瘤である.最近気になり受診.
・臨床的に脂肪腫と診断され,放置しても治らないといわれ切除することにする.手術に関する説明書や同意書はとっていない.
・キシロカイン®E入り局麻剤で手術を開始.予想に反して腫瘍塊は深層にあり,皮下組織まで剪刃でジョキジョキと切開する.
・深部に入り,房状の脂肪塊を3つみつける.分葉しており一塊としては摘出できない.そこで,そのうちの1つを切除,その際に急激な動脈性の出血を認める.モスキート鉗子で結紮して止血するも,次第に気分不快,発汗多量,顔面蒼白になり,血圧は触診できない.触診で80mmHgにて脈拍微弱.摘出手術は中止し,止血を確認後に縫合する.
・ソリタ®-T3を点滴静注し,近隣の上級施設への受診を勧めるも,授乳中にてできれば帰宅を希望と話す.悪寒や四肢冷感が多少治まってきたので,家族に連絡して帰宅.抗菌薬を処方.
・帰宅するも全身症状は改善せず,紹介状を持参し上級施設救急外来に受診.CT検査で腹壁や腹腔内に血腫あり.補液と造血剤内服で経過観察,活動性の出血はなく無事退院する.
(「経過」より)
Copyright © 2021, KYOWA KIKAKU Ltd. All rights reserved.