特集 分娩時の出血
産科の出血性ショック
大内 広子
1
1東京女子医科大学
pp.23-27
発行日 1972年5月1日
Published Date 1972/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204364
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はじめに
わが国の妊産婦死亡は年々減少しているが,欧米諸国に比し,まだ高率である。特に妊娠中,分娩時を含めて,出血が原因で,母体死亡をきたしたものは,昭和43年の統計において1番多かった。元来妊娠,分娩は生理的現象であって何ら異常をしめさず経過するが,その全身的,局所的変化は著しく,特に循環系における変動はめだっている。一方では防御機能は発達し,すべてに抵抗力をしめすが,ある程度をこえた侵襲にたいしてはかえって脆く,致命的結果をきたしやすい。
正常であった分娩なのに胎盤娩出前後に急に大出血をきたし,母体のショック状態におちいったことを経験した人は多いとおもう。産科領域にてはこの緊急症の発生がおこりやすい状態ならびに状況にある。この産科におけるショックの主なるものは表1にしめすとおりである。今回のテーマは出血性ショックであるので,それについてまとをしぼって説明したい。
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