巻頭言
出血性ショックと血液濃縮
高折 益彦
1
1川崎医科大学麻酔科
pp.795
発行日 1973年9月15日
Published Date 1973/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202526
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急性,大量の出血は静脈還流を減少せしめ,心拍出量の低下,血圧の低下,末梢循環の減少を来す。それによる末梢組識の低酸素状態は直接に,また局所に産生されるchemical mediatorによって小血管の拡張をもたらし,より多くの血流の導入につとめる。しかし同時に全身的に増加するカテコールアミンの作用とともに血液成分,特に血漿の血管外漏出を増加せしあ血液量の減少をもたらし,いわゆるショックの悪循環を形成するといわれていた。たしかに出血が発生した10〜20分間は胸管リンパ流量はじめその他のリンパ流量も増加し血漿の血管外漏出を裏づけるかの如き印象を与えるが,その後においてはむしろリンパ流量は減少する。またもしかかる血漿の血管外漏出増加が生体内で発生していたならば,血液量は出血量を上回って減少するはずである。しかし今までの多くの研究では血液量が出血量を上回って減少する現象が観察されていない。むしろ予想される量以下の血液量減少にとどまっている。すなわち出血による血液量の減少は血管内圧の低下をもたらし血管外腔に存在する組織間液を逆に血管内に導くためであるからと説明されている。だからこそかなりの出血が存在しても案外循環血液量が維持され全身状態にも特に重篤な変化を認めないごとを経験する。
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