特集 異物の診断と治療
ガストログラフィン®による高吸水性樹脂玩具誤飲の手術回避
西田 ななこ
1
,
矢野 圭輔
1
,
鶴野 雄大
1
,
杉田 光士郎
1
,
村上 雅一
1
,
大西 峻
1
,
川野 孝文
1
,
家入 里志
1
Nanako Nishida
1
,
Keisuke Yano
1
,
Yudai Tsuruno
1
,
Koshiro Sugita
1
,
Masakazu Murakami
1
,
Shun Onishi
1
,
Takafumi Kawano
1
,
Satoshi Irie
1
1鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系小児外科学分野
pp.620-625
発行日 2025年6月25日
Published Date 2025/6/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000001224
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はじめに
高吸水性樹脂は,吸水性(自重の数百倍の水を吸収してゲル化する),保水性(いったん吸水した水は多少の圧力を加えても漏出しない),膨潤性(すばやく吸水する)といった特性を有し,これらを利用した高吸水性樹脂素材の製品が一般家庭でも数多く用いられている1)。近年では,色鮮やかでさまざまな形や大きさをしている高吸水性樹脂素材の玩具が商品化されているが,本来ならば遊具としての対象年齢外である乳幼児の興味を引きやすく,誤飲の危険性が指摘されている2)。先述の高吸水性樹脂の3つの特性により,通常の消化管異物とは異なり,異物が胃の幽門を通過したあとに膨張して消化管内に停滞し,腸閉塞を発症するリスクが高いと考えられる。2015年に朝長らが,わが国で最初の高吸水性樹脂誤飲による十二指腸閉塞例を報告し3),以降も国内外で開腹手術に至った誤飲症例の報告が散見される4~6)。筆者らも,2例の高吸水性樹脂素材玩具の誤飲症例の経験を有しており,小腸に嵌頓した高吸水性樹脂素材玩具による腸閉塞に対し開腹手術を施行した乳児の1例目の経験をもとに7),当施設で経験した2例目である高吸水性樹脂素材玩具を大量誤飲した幼児例に対し,ガストログラフィン®による小腸造影で手術を回避し得た症例を報告している8)。

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