特集 門脈血行異常に対する治療up to date
門脈血行異常症に合併する肝腫瘤
梶原 啓資
1
,
松浦 俊治
1
,
前田 翔平
1
,
内田 康幸
1
,
鳥井ケ原 幸博
1
,
髙橋 良彰
1
,
田尻 達郎
1
Keisuke Kajihara
1
,
Toshiharu Matsuura
1
,
Shohei Maeda
1
,
Yasuyuki Uchida
1
,
Yukihiro Toriigahara
1
,
Yoshiaki Takahashi
1
,
Tatsuro Tajiri
1
1九州大学大学院医学研究院小児外科分野
pp.498-501
発行日 2024年5月25日
Published Date 2024/5/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000821
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Ⅰ.小児における門脈血行異常症
門脈血行異常症は特発性門脈圧亢進症,肝外門脈閉塞症,Budd-Chiari症候群により門脈血流の異常をきたす疾患群の総称である。いずれの疾患も門脈圧亢進と側副血行路を介した門脈体循環シャントをきたし,門脈圧亢進に伴う食道・胃静脈瘤とその出血,脾腫や脾機能亢進,腹水,高アンモニア血症による肝性脳症などさまざまな症状を呈する。特発性門脈圧亢進症とBudd-Chiari症候群に関しては確定診断のピーク年齢が成人期にあるが,肝外門脈閉塞症の確定診断は20歳未満の場合が多く1),小児領域でも遭遇しやすい疾患である。肝外門脈閉塞の原因としては,交換輸血,臍静脈カテーテル留置,臍炎,手術,外傷,腹腔内感染,腫瘍による圧迫,遺伝性血栓性素因(プロトロンビン・JAK2などの遺伝子異常,プロテインC欠損症,プロテインS欠損症など)があげられるが,原因不明の原発性閉塞も存在する。肝外門脈閉塞症では,肝門部にcavernous transformationと呼ばれる側副血行路の発達を認める。この側副血行路が原因となり,胆管の物理的圧迫や虚血性変化から胆管静脈瘤(portal biliopathy)と呼ばれる病態を呈することが多く,進行すると黄疸や結石形成を認める場合がある2)。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.