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脊髄性筋萎縮症とは
脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)は脊髄前角の運動神経細胞の進行性かつ不可逆的な変性による筋弱力,筋緊張低下を呈することを特徴とする神経筋疾患である。常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式で,疾患頻度は約2万出生に1人とされる。本疾患の主因は責任遺伝子であるsurvival motor neuron 1(SMN1)遺伝子のホモ接合性欠失(ホモ欠失:SMAの原因の95%)であることがわかっている。残りの5%は片側アレル欠失と片側アレル点変異の複合ヘテロ接合性の異常(点変異)である。同遺伝子は運動神経細胞の生存に不可欠なSMNタンパク質をコードしている。SMN1遺伝子の欠失は生物にとっては致死的な変異であるが,ヒトはバックアップ遺伝子ともよばれるSMN2遺伝子をもち,これがSMNタンパク質を少量(SMN1遺伝子の10%程度)ながらも産生できるため生存が可能となる。しかし,産生されるSMNタンパク質量は十分でないためSMAの児が生まれてくる。SMN2遺伝子のコピー数は症例によって幅広い病状を呈し,そのコピー数が増加すると軽症化する傾向が知られている。現在は0型(最重症病型)からⅣ型(成人期発症軽症型)の5型に分類される(表1)。SMA全体の約60%を占めもっとも頻度が高いとされるSMAⅠ型(主なSMN2遺伝子コピー数は2コピー)は,乳児期早期に発症し自然歴では座位を獲得できず,積極的な治療管理がなければ生命予後2歳未満である。Ⅱ型(主なSMN2遺伝子コピー数は3コピー)も自然歴では座位獲得までで独歩は獲得できず,病状の進行により将来寝たきりとなる重症病型であり,Ⅰ型とⅡ型を合わせてSMA全体の約80%を占める1,2)。
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