特集 腎・泌尿器疾患―血尿から移植まで
腎・泌尿器疾患診療の進歩
常染色体潜性多発性囊胞腎
佐藤 舞
1
,
中西 浩一
2
SATO Mai
1
,
NAKANISHI Koichi
2
1国立成育医療研究センター腎臓・リウマチ・膠原病科
2琉球大学大学院医学研究科育成医学(小児科)講座
pp.1169-1171
発行日 2023年7月1日
Published Date 2023/7/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001015
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
常染色体潜性多発性囊胞腎(ARPKD)は,常染色体潜性遺伝形式を示す遺伝性囊胞性腎疾患で,腎集合管の拡張と胆管異形成および肝内門脈周囲線維化を含む肝病変を特徴とする。染色体6p21.1-p12に存在するPKHD1(polycystic kidney and hepatic disease 1)の遺伝子変異に起因する一次線毛の構造異常や機能異常が疾患をひき起こすと推測されている1)。また,2017年に臨床的にARPKDを呈する4家系7症例においてDZIP1L遺伝子変異が同定され,第2のARPKDの原因遺伝子として報告されている2)。近年の次世代シークエンサーの普及により,これまで考えられていたよりも軽症のARPKDが存在することが明らかとなり,ARPKDは成人においても線維囊胞性肝腎疾患において考慮すべき鑑別疾患である。北米では1990年以降レジストリ登録が開始され,発症頻度は出生10000~40000人に1人と報告されている3)。ヨーロッパにおいても,2013年からドイツを中心としてARPKDのレジストリが立ち上げられており,18か国から500例以上の患者が登録されている4)。しかし,生後24時間以内に死亡する症例の把握は困難であり,正確な出生頻度や死亡率の評価は不明である。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.