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特集 病因・病態生理から読み解く腎・泌尿器疾患のすべて
Ⅲ.尿細管・間質性・囊胞性疾患
6.常染色体顕性(優性)多発性囊胞腎(ADPKD)
Autosomal dominant polycystic kidney disease(ADPKD)
諏訪部 達也
1
Suwabe Tatsuya
1
1虎の門病院腎センター内科
キーワード:
多発性囊胞腎
,
ADPKD
,
多発性囊胞肝
,
PLD
Keyword:
多発性囊胞腎
,
ADPKD
,
多発性囊胞肝
,
PLD
pp.122-128
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000001010
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疫学
常染色体顕性(優性)多発性囊胞腎(auto-somal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)は最も多い遺伝性腎疾患であり,正確な有病率は不明だが,わが国では約4,000人に1人(10万人当たり25人)程度で認められると報告されている1)。しかし,病理解剖での有病率は10万解剖当たり100~300人程度で,臨床的有病率は10万人当たり20~90人程度と報告されており,病理診断と臨床診断で5~10倍程度,有病率が異なっている。このように診断する方法によって有病率が大きく異なる(表1,表2)。また,国や地域によって診断基準も異なるので,ADPKDの正確な有病率は不明である。発生頻度についても不明な部分が多いが,米国ミネソタ州オルムステッド群の人口データベースを用いた研究では,1935~1980年では,10万人の1年当たりのADPKDの発生数が1.38であったが,1980~2016年になると10万人の1年当たりの発生数は,3.06であったと報告されている2, 3)。画像診断の進歩や検査を受ける頻度が増したことにより,より軽いADPKDが診断されるようになったためと考えられる。また一般人口を対象とした遺伝子検査の研究でも,ADPKDの高い病因性のある遺伝子変異は,一般人口10万人当たり99.3人に認められたと報告されており4),このことからも,今までに診断されていなかった軽度のADPKDは想像以上に多いのではないかと考えられる。
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