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増刊号 小児疾患診療のための病態生理3―改訂第6版―
Ⅱ.先天代謝異常
29.Krabbe病
Krabbe disease
酒井 規夫
1
SAKAI Norio
1
1大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻生命育成看護科学講座成育小児科学
pp.196-199
発行日 2022年12月23日
Published Date 2022/12/23
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000543
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1 基本病因,発症機序
Krabbe病は1916年,オランダ神経学者Knud Krabbeにより最初に報告され1),1970年にSuzukiらにより欠損酵素が同定された遺伝性脱髄疾患である2)。ライソソーム酵素,ガラクトセレブロシダーゼ(galactocerebrosidase;EC3.2.1.46)の欠損により,中枢,末梢の神経線維の脱髄をきたし,中枢,末梢神経障害をきたす常染色体性潜性遺伝(劣性遺伝)形成の疾患である。本酵素の遺伝子はGALCで染色体14q31に位置する。頻度は10~20万人に1人程度と考えられる。本酵素の基質は糖脂質であるガラクトセレブロシド(Gal-Cer),サイコシンなどがあり,とくに後者の蓄積がミエリン形成細胞に対する細胞毒性を持つため,脱髄が発症すると考えられている。酵素と基質の結合に必要な因子として,活性化因子saposin A(SAP-A)が知られているが,このSAP-A遺伝子の変異によっても若年発症のKrabbe病とほぼ同じ症状となることが報告されている3)。ただし,大変まれであり国内症例の報告はまだない。
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