特集 妊産婦死亡の現状と削減に向けた対策
総論
死因究明のための病理解剖の重要性
阿萬 紫
1
,
若狹 朋子
2
AMAN Murasaki
1
,
WAKASA Tomoko
2
1宮崎県立宮崎病院病理診断科
2近畿大学奈良病院病理診断科
pp.301-305
発行日 2023年3月10日
Published Date 2023/3/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000806
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はじめに
2010年に日本産婦人科医会による妊産婦死亡登録事業が開始され12年が経過し,2022年6月30日現在で,本事業に登録された事例は合計536例,そのうちの517例についての事例検討が終了し報告書が作成された。妊産婦死亡症例を1例ずつ医学的にていねいかつ詳細に検討することで,原因の解明,予防策の提案,妊産婦死亡減少のための具体的な提言などを行うことが本事業の目的であり,その目的を完遂するためには,死因に少しでも疑問点や未解決の部分が残る症例においては,解剖による詳細な検討が必要不可欠と考えている。とくに病理解剖による病態の詳細な検討は,正確な死因の同定,さらには病態解明につながる新しい知見を得られる可能性があり,さらなる妊産婦死亡例の低下につながるものと思われる。しかしながら実際の病理解剖の実施率は全妊産婦死亡症例の20%前後と低い水準のまま経過しており,病理解剖の重要性を改めて周知し解剖率の上昇につなげる必要がある。
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