FORUM 死を看取る――死因究明の場にて・Vol.23
死因究明の実践⑥
大澤 資樹
1
Motoki OSAWA
1
1東海大学医学部基盤診療学系法医学領域
pp.1023-1025
発行日 2024年9月14日
Published Date 2024/9/14
DOI https://doi.org/10.32118/ayu290111023
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自殺
自殺は人類の歴史においてかならず現れる行為で,ヒトという生物にとって,なかなか克服できない悪癖といわれる.時代や宗教によって,とらえ方には違いがあり,古代ギリシャでは理にかなった選択として容認されていた.主君の死を追って臣下が死ぬことは殉死とよばれる.ヒンドゥー教におけるサティーは夫が死亡すると妻が後追い自殺する風習で,法律で禁止された現在もまれに行われている.仏教では苦行の末の死は聖人と崇められる.わが国では,江戸時代には切腹という自殺の形態があり,自らの責任をとる方法として正当化されていた.一方で,中世のキリスト教圏では自殺は神や国家への冒瀆とされ,家族から財産を取り上げたり罰を与えたりし,自殺を強く戒めた歴史がある.わが国は歴史において自殺を比較的許容してきた社会だが,現代に生きるわれわれにとって,自殺は決して肯定的に受け入れられることはない.しかし罰せられるわけではなく,個人が選択したやむをえない行為ととらえられる傾向にある.
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