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1 病因・病態
ミトコンドリア病(mitochondrial disease)とは,ミトコンドリアDNA(mitochondrial DNA:mtDNA)または核DNA(nuclear DNA:nDNA)上の遺伝子の病的バリアントにより,ミトコンドリア呼吸鎖(mitochondrial respiratory chain:MRC)複合体における酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation:OXPHOS)が異常をきたし発症する病気である1~3)。ミトコンドリアの主要な機能は,MRCにおける電子伝達を介したOXPHOSによるアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate:ATP)生産である。細胞活動に必要なエネルギーはATPにより供給されるため,ミトコンドリア病はさまざまな臓器に多様な臨床症状を引き起こす。さまざまな臓器に現れた臨床像から,ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(mitochondrial myopathy,encephalopathy,lactic acidosis, and stroke-like episodes:MELAS),Leigh脳症,ミトコンドリア心筋症,ミトコンドリア肝症といった診断がなされる1~3)。腎も例外ではなくミトコンドリア病における障害臓器となる。ミトコンドリア腎症(mitochondrial nephropathy:MitN)とは,mtDNAもしくはnDNA上の遺伝子の病的バリアントにより,腎臓を構成する細胞におけるMRCのOXPHOSが異常をきたすことにより発症する遺伝性腎疾患と定義することができる4)(図)。一方,ミトコンドリア病による腎以外の他臓器障害に起因する2次的な腎障害,すなわち腎構成細胞のOXPHOS機能自体は遺伝的には障害されていないケース(例:ミトコンドリア病による全身代謝異常に伴う急性腎障害など)は,腎障害の病態を理解し治療を行っていくうえでも,MitNとは区別することが望ましい。
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