特集 大腸腫瘍の分子生物学
Ⅲ.大腸腫瘍におけるエピゲノム異常
金田 篤志
1
,
八木 浩一
2
,
酒井 英嗣
1,3
,
松坂 恵介
1
,
高根 希世子
1,4
,
岡部 篤史
1
1千葉大学大学院医学研究院分子腫瘍学
2東京大学大学院医学系研究科消化管外科学
3NTT 東日本関東病院消化器内科
4東京大学医科学研究所臨床ゲノム腫瘍学
キーワード:
層別化
,
DNA メチル化
,
ヒストン修飾
,
インプリンティング
,
腫瘍リスク
Keyword:
層別化
,
DNA メチル化
,
ヒストン修飾
,
インプリンティング
,
腫瘍リスク
pp.421-428
発行日 2018年9月20日
Published Date 2018/9/20
DOI https://doi.org/10.19020/INT.0000000234
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エピゲノム情報とはゲノム上の修飾情報を指し,遺伝子の転写を制御し細胞の分化状態を決定する.癌は,ゲノムの配列構造の異常の蓄積に加え,エピゲノム異常の蓄積が原因となって発症し,大腸粘膜において蓄積した一部のエピゲノム異常は発癌リスクを上昇させる原因となる.遺伝子プロモーター領域におけるDNA 異常メチル化は癌抑制遺伝子を不活化する重要な分子異常であるが,その蓄積は腺腫の段階でほぼ完了する.その異常は大腸癌においても引き継がれ,それゆえ大腸癌は蓄積したエピゲノム情報を用いて,異なる発癌分子経路を反映したいくつかのサブタイプに明瞭に層別化される.DNA 異常メチル化を大腸粘膜に促進する環境因子としては加齢,炎症,喫煙,肥満などが,抑制する因子としてはアスピリンやホルモン補充療法などが報告されている.エピゲノム変化は発癌後も微小環境など代謝状態の変化により可塑的に引き起こされ,治療抵抗性の獲得などにも重要な役割を果たしうる.
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