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Case
患者:65歳,女性.
現病歴:2年前に散歩中,何の誘因・前兆もなく突然失神.意識回復後,頭部を打撲しているのに気づく.その後も,1回/2~3カ月の頻度で,同様なエピソードを繰り返す.失神(完全に意識を失う)の場合もあれば,数秒間頭が真っ白になる程度で治まる場合もある.痙攣は指摘されていない.この間,複数の病院で脳外科などを受診し,脳のCTやMRIなどの検査を複数回行い,「脳の血管が細い」といわれ,「血の流れを良くする薬」をもらい,最近まで継続していた.1カ月ほど前から急に頻度が増加し,症状が毎日のように出現するようになったため,来院.なお,前日はミニバレーをし,当日は車を運転して来院.
既往歴:5年前,「無痛性甲状腺炎」の診断にてチラーヂンS(R)50μg内服加療中.甲状腺機能は正常化しているとのこと.6年ほど前,胸部絞扼感あり,冠動脈造影検査を受けるも異常なし.
薬剤,嗜好歴:上記チラーヂンS(R),喫煙なし,機会飲酒.
家族歴:父;高血圧,母;脳卒中.
心理・社会的背景:夫;肝臓癌で死亡.子ども2人は独立し,現在一人暮らし.
身体診察:全身状態良好,腕などに紫斑認める(失神による打撲の痕),血圧160/90 mmHg(測定途中にコロトコフ音が数秒間途切れる),脈拍58回整,体温35.2℃,貧血・黄疸なし,甲状腺腫なし,頸動脈bruitなし,四肢の動脈触知異常なし,心尖拍動左方変位なし,心音整,大動脈弁領域に2度の収縮期雑音,呼吸音異常なし,腹部異常なし,神経学的所見異常なし.
検査:心電図;正常洞調律,脈拍60回/分,有意な異常所見なし.胸部X線;心拡大など異常なし.
その後の経過:同日,循環器内科にコンサルトを行う.循環器での心電図ではMobitzⅡ型の不整脈を認める.翌日,同科入院.入院中,失神出現,心電図モニターでは完全房室ブロックを認めた.心エコーでは弁の異常なく,壁運動の異常もない.心臓カテーテル検査では冠動脈は異常なし,電気生理学的検査では房室電導障害を認める.ペースメーカを植え込み,症状消失,退院となる.なお,甲状腺機能はほぼeuthyroidであった.
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