特集 膵癌の早期診断 ―診療ガイドラインの改訂を踏まえて
4.膵癌スクリーニングの可能性 ― 早期診断に向けて(2)膵癌の早期診断を目指した十二指腸液中バイオマーカー探索
井手野 昇
1
,
中村 聡
1
,
中村 雅史
1
1九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科学
キーワード:
膵癌
,
早期診断
,
膵液
,
十二指腸液
Keyword:
膵癌
,
早期診断
,
膵液
,
十二指腸液
pp.154-157
発行日 2023年1月20日
Published Date 2023/1/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000002507
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膵管からの膵液採取は内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)による重症膵炎の合併症リスクがあり,膵癌のスクリーニングには適さない.多くの膵癌患者は腹部症状を訴え診断前に上部消化管内視鏡検査を受けているが,精密検査をされることなく結果として進行して診断されている現状に着目し,われわれは通常の内視鏡で採取できる十二指腸液を用いた膵癌診断法を開発し,膵癌の早期診断への流れを作ることを目指した研究を行っている.膵癌ならびに前癌病変の組織標本・膵液中で高値を示すS100P (S100 calcium-binding protein P)タンパク質をバイオマーカーとして採用し,当科での前向き臨床研究で十二指腸液採取関連合併症は皆無であり,十二指腸液中S100P濃度の測定で膵癌検出が可能であることを示した.さらに,膵液中のmicro RNAやエクソソームに保存されているmicro RNAも正確な膵癌診断に有用であることが明らかになっており,十二指腸液への応用によって,より低侵襲な膵癌早期診断を目指している.
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