特集 薬剤性消化器疾患の診療
1 .薬剤性消化器疾患のメカニズム(2)下部消化管(小腸・大腸)
渡邉 俊雄
1
,
灘谷 祐二
1
,
大谷 恒史
1
,
谷川 徹也
1
,
藤原 靖弘
1
1大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学
キーワード:
非ステロイド性抗炎症薬
,
topical effect
,
自然免疫系
,
殺細胞性抗がん剤
Keyword:
非ステロイド性抗炎症薬
,
topical effect
,
自然免疫系
,
殺細胞性抗がん剤
pp.683-688
発行日 2020年6月20日
Published Date 2020/6/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000001194
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非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は粘膜のプロスタグランジン量の低下作用に加えて,topical effect と呼ばれる上皮細胞に対する直接傷害作用により,粘膜バリア機能を破綻させる.その結果,腸内細菌などが粘膜内に浸潤して自然免疫系が活性化され,引き続き起こる好中球浸潤により小腸傷害が発症する.Toll‒like receptor 4 シグナルが炎症の起点となり,NLRP3 インフラマソームなどが炎症ネットワークをさらに活性化する.また,フルオロウラシルやイリノテカンなどの殺細胞性抗がん剤による消化管傷害においてもこれらの自然免疫系が活性化され,傷害機序の中心的な役割を果たす.一方,vascular endothelialgrowth factor 経路を標的とする分子標的治療薬は比較的高頻度に消化管穿孔を惹起するが,その機序には腸管虚血などの複数の要因が関与している可能性が示唆されている.
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