症例
X連鎖性遺伝性水頭症と考えられる1例
安尾 忠浩
1
,
短田 浩一
2
,
大久保 智治
1
T. Yasuo
1
,
K. Tanda
2
,
T. Okubo
1
1京都第一赤十字病院産婦人科
2同 小児科
pp.227-232
発行日 2019年2月1日
Published Date 2019/2/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000000770
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X連鎖性遺伝性水頭症(XLH)はX染色体上に存在するL1CAM遺伝子の異常が原因とされ,水頭症のほか神経運動発達遅滞,下肢の痙性麻痺および拇指の内転屈曲などの多様な臨床的特徴を持つ疾患である。拇指内転屈指を合併する水頭症にて出生前からXLHを疑い,出生後の遺伝子検査にてL1CAM遺伝子に新規バリアントを認めた1例を報告する。
症例は31歳,1妊0産で自然単胎妊娠であった。前医にて両側脳室拡大を指摘され,紹介受診となり,側脳室後角とBPDの拡大を認めた。家族歴として患者の兄弟ともに水頭症を認め,MRIにて左拇指内転屈指を認め,家族歴を含めXLHを疑った。出生した児は両側脳室拡大や拇指内転屈曲に加え,鼻根部平坦を認めた。遺伝子解析にて児と母のL1CAM遺伝子にバリアントを認め,児はヘミ接合,母はヘテロ接合であり,これらは公開データベースに登録のない新規バリアントであった。胎児期の超音波検査にて水頭症を疑う場合,拇指の内転屈曲を確認することや詳細な家族歴を聴取することが診断の一助になりうる。XLHを疑う患者やその家族に対しては,他科と連携のもと,患児の予後や次回妊娠について慎重なカウンセリングが必要である。
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