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心筋症の診断においては,拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy;DCM),肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy;HCM),拘束型心筋症(restrictive cardiomyopathy;RCM),不整脈原性右室心筋症(arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy;ARVC),左室心筋緻密化障害(left ventricular noncompaction;LVNC)だけでなく,アミロイドーシス,Danon病,Fabry病,糖原病などの代謝蓄積性疾患,ミトコンドリア病,筋ジストロフィなどの神経筋疾患など,全身性疾患も鑑別に含めなければならない。とりわけ心外症状を伴う二次性心筋症の疾患鑑別に際しては,遺伝子解析が有用であり,診断精度を高めることで疾患特有の有用な治療選択肢を増やすだけでなく,未発症者診断を経て先制医療にもつなぐ役割を担っている。次世代シーケンサー(next generation sequencer;NGS)を用いたシーケンスを含むゲノムインフォマティクス分野はこの数年で非常に洗練され,専門解析施設の解析精度は均一・高度かつ安定したものとなった。配列解析の高速化,解析単価の圧縮,そしてゲノムバリアントデータベースの充実だけでなく,クリニカルシーケンスなど臨床からのニーズ拡大も普及の一因である。解析用途は希少難病の原因遺伝子解析から癌ゲノム解析までさまざまな広がりをもつ。循環器分野でも基礎医学から創薬開発を含めた橋渡し研究,そして医療現場における遺伝子診断に至るまで応用範囲は広く,Mendel遺伝病を中心とした遺伝性心血管疾患の原因遺伝子変異同定にNGS解析の能力には大きな期待が寄せられている。本稿においてはまさにパーソナルゲノムの時代にふさわしい先進技術を利用した現在の遺伝子検査としてのNGS解析を,主に全エクソーム(whole exome sequence;WES)解析を中心に,症例から疾患変異同定までの流れと将来像について概説する。
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