私論
再生医療の早期承認制度に思う
岡田 誠司
1
1九州大学生体防御医学研究所教授
pp.772-772
発行日 2019年6月1日
Published Date 2019/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei70_772
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数年前から『Nature』誌のeditorialが,日本の再生医療の臨床応用に対して警告を発すると共に,日本政府が推し進める早期承認制度をやや勇み足ではないかと冷ややかな目で見ている1,2).早期承認制度は,症状が重篤で患者数が少なく臨床試験が難しい疾患に対する医薬品を対象としたもので,簡単にいえば有効性が推定され,かつ安全性が確認されれば,条件および期限付きで第Ⅲ相臨床試験をすっ飛ばして製品を市販して良い,というものである.その上で,市販後に改めて治療成績や安全性を再検証しましょう,ということである.現在までにヒト表皮由来の植皮用細胞シートや,整形外科医には馴染み深いヒト軟骨由来組織などがすでに承認され,製品も販売ならびに保険収載されている.この制度は患者にとっても,これまでは実用化までに数年以上もかかっていた先進的な医療により早くアクセスできるようになるという大きな利点をもつ.
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