Japanese
English
特集 脊髄再生
グリア瘢痕の病態と再生医療
Pathology of Glial Scar and Regenerative Medicine
原 正光
1
,
岡田 誠司
1
,
中島 康晴
1
Masamitsu HARA
1
,
Seiji OKADA
1
,
Yasuharu NAKASHIMA
1
1九州大学大学院医学研究院整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, Graduate School of Medical Science, Kyushu University
キーワード:
脊髄損傷
,
spinal cord injury
,
グリア瘢痕形成
,
glial scar formation
,
アストロサイト
,
astrocyte
Keyword:
脊髄損傷
,
spinal cord injury
,
グリア瘢痕形成
,
glial scar formation
,
アストロサイト
,
astrocyte
pp.563-569
発行日 2018年6月25日
Published Date 2018/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200897
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はじめに
これまで「成体哺乳類の中枢神経系(脳,脊髄)は一度損傷を受けると再生しない」という定説が長年信じられてきたが,近年,幹細胞を中心とした再生医学の進歩により,脊髄損傷の再生医療への期待が高まっている.動物実験を用いた基礎研究において,亜急性期の損傷脊髄への幹細胞移植の効果が数多く報告されている5,8,9,12,18,22).しかし,慢性期損傷脊髄への幹細胞移植は効果が芳しくなく,その原因の探索のため,われわれは,以前に,マウスを用いた動物実験により,慢性期損傷脊髄に移植した幹細胞の活動性を,急性期や亜急性期の損傷脊髄に移植した幹細胞と比較して検証した6).結果として,慢性期損傷脊髄に移植した幹細胞における分化能や栄養因子の発現はむしろ良好であることを発見し,慢性期損傷脊髄への幹細胞移植の効果を阻害しているのは,脊髄自体の治療不応性であることがわかった.成体哺乳類の脊髄損傷後亜急性期から慢性期にかけて形成されるグリア瘢痕は,損傷部を覆うかさぶたのような組織で,神経再生を阻害する主な要因と報告されており1,16),グリア瘢痕が形成されない両生類のアホロートル(俗称ウーパールーパー)では脊髄損傷後も神経が再生する14,15).そこで,われわれは,グリア瘢痕が慢性期損傷脊髄の治療不応性の原因の1つで,幹細胞移植の効果を阻害していると考え,このグリア瘢痕の形成メカニズムの解明とその形成阻害を目標として研究を進めてきた.本稿では,その成果について報告する.
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