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は じ め に
高齢化社会において頚椎症性脊髄症(CSM)および頚椎後縦靱帯骨化症(C-OPLL)は,頚髄の障害のため,巧緻運動障害や歩行障害が進行しQOLの低下も著しく進行し手術が必要になる症例も増加している.1988年~2012年の56,744件の脊椎手術登録データを分析したAizawaら1)の報告では1988年(892件)~2012年(3,807件)に4.3倍増加しており,特に70歳以上と80歳以上の患者の脊椎手術件数は20~90倍に増加していた.適応疾患では腰部脊柱管狭窄症,腰椎椎間板ヘルニア,CSMの順に多く,2012年時点のCSM患者の半数が70歳以上であった.頚椎症性脊髄症診療ガイドライン20152)では高齢者のCSMの臨床的特徴として罹病期間が長く,術前の神経症状の重症例が多く,手術成績が一般に非高齢者よりも劣ること,椎体すべりなどの不安定性が,非高齢者よりも強く病態に関与していること,前方すべりは,固有脊柱管前後径が広くても症状の発症に関与する場合が多いことなど,高齢者に焦点をあてた記載もある.
脊椎手術において手術による術後神経麻痺の出現は患者のQOLを低下させるだけでなく,医療経済的にも大きな負担となる.脊椎手術の麻痺の頻度は今城ら3)の31,380例を対象にした脊椎脊髄手術調査報告によると,脊髄障害85例(0.3%),神経根障害297例(0.9%),馬尾障害50例(0.2%)と報告されている.脊髄障害をきたした85例の疾患の内訳は,腫瘍が21例(24.7%),後縦靱帯骨化症(OPLL)20例(23.5%),CSM 13例(15.3%)の順に多かった.また,神経合併症の発生頻度でみるとヘルニアが61例(0.8%),狭窄症が160例(1.1%),すべり症が41例(1.1%),靱帯骨化症が53例(3.7%),脊柱変形が側弯で31例(2.1%),後弯が15例(2.8%),骨粗鬆症性椎体圧壊が8例(1.0%)と靱帯骨化症がもっとも高かった.したがって当科でもCSMに対する通常の椎弓形成術であっても,術後神経合併症を防ぐため術中脊髄モニタリングを従来より行うことが一般的になってきた.
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